イリノイ州の蛍石

 

アメリカの蛍石といえばまずイリノイ州が思い浮かぶといっても過言ではないほどメジャーな産地です。その歴史は古く、このオハイオ川を挟んでイリノイ州南部とケンタッキー州北西部の一帯は1800年代から蛍石産地として知られており、一時はアメリカで生産される蛍石の75%を占めたほど。

現在ではメキシコ産や中国産におされてしまい90年代中盤までには軒並み閉山してしまいましたが、未だ一定数の美しい標本が流通しています。

Cave-in-Rockというのが一番聞き覚えがあるでしょうか、それともただ単に”イリノイ”と呼び名わすほうが一般的なのかもしれませんね。

 

 イリノイで最初の鉱山がスタートした1842年から、全ての鉱山が閉山した1995年までの150年にもわたる歴史の中、第一次世界大戦以前はRosiclare、それ以降がCave-in-Rockへと中心も変遷しています。

個々の鉱山をみていくと、90年代まで稼働していたMinerva#1鉱山、Denton鉱山、Annabel Lee鉱山の3か所が特に有名で標本を目にする機会も多いことでしょう。その他にもHill-Ledford鉱山やW.L. Davis-Deardorff鉱山、Crystal鉱山、Victory鉱山なども外すことのできない産地といえます。また、それらと比べると知名度に劣りはするもののMahoning No.4鉱山やNo.7鉱山、Gaskins鉱山など良質な蛍石を産した鉱山がいくつもいくつも存在したのです。数にして200以上、まさに星の数ほどの鉱山から世に蛍石が送り出され、長い歴史の闇の中へと消えてゆきました。

このページでは、そんなイリノイの蛍石について扱います。


Minerva#1 Mine

Minerva#1 Mine, Ozark-Mahoning Co., Caive-in-Rock, Hardin Co., Illinois

Attr: Rosiclare Level, Mined in 1990's

Miniature sized

 

閃亜鉛鉱を母岩とし水色と紫色の蛍石が結晶した、 教科書通りのMinerva#1鉱山の美しい標本。

Comeptition Levelかと言われると勿論弱いが、閉山して20年もたつ現状においては色・透明度・バランスがハイレベルにまとまっているのではないか。

 

個人的には割合思い入れのある標本。これ出会った故にIllniois fluorite集めに走ったといわけではありませんが、きっと今も強いパッションを持って集められているのはこの標本に因るところが少なからずあるかなという。これでゴールにしておけば苦しまずに済んだものを・・・、とも言う。

ちなみにベストショットは別アングルで、倍は見栄えが良いと思う。

 

昨年出した同人誌にわりといい感じのイリノイ州の蛍石は掲載してしまったので、どうしても新しくイリノイ州の蛍石をHP上に掲載する気がむかずすぎてしまった。今年はちょくちょく載せていこうか・・・どうしたものだろう。

(2017/1/1, 8/1編)

Rosiclare Level, Minerva#1 Mine, Ozark-Mahoning Co., Caive-in-Rock, Hardin Co., Illinois

Miniature Sized

 

ほどよい水色に紫を一滴垂らした様が美しいミネルバ。勿論Rosiclare Lv.のものです。

透明度、照りも抜群ですが、一部にダメージがある点だけはいただけない。そういった意味では100%の満足とは程遠い、でもこのレベルの物最近は全く見かけないよな…そんな標本です。

恐らくは1990年代初頭のCross-Cut鉱体から産したもの。ここからはミネルバどころかイリノイ州の中でも最も良質な蛍石を産したとも言われるあたり、上物はとことん凄い。だからMinerva#1は止められない。

例えば宝くじを当てれば再開させたいとか夢想するわけですが、PillarRobbingで上層部は崩壊しているのではとか、そもそも宝くじ程度の金額ではどうしようもないのではとか、色々いらんことを考えるわけです。

(2017/8/19)

Minerva#1 Fluorite&Calcite アメリカ 蛍石

Minerva#1 Mine, Caive-in-Rock, Hardin Co., Illinois

Attr: Rosiclare Level, Circa 1993

45mm×40mm×28mm Largest = 40mm

 

アメリカの蛍石を代表するイリノイ州、その中でも特に有名なMinerva#1の青い蛍石。

 

爽やかな水色の蛍石と、白い1cm程度の犬牙状カルサイトが共生しています。この色合いよりも現状人気なマリンブルーやトリカラーよりは軽やかな印象をうけます。しかし、これはこれでミネルバらしくてよいのです。

今となってはイリノイ州の蛍石に執着して蒐集する身となり果ててしまいましたが、この標本は蛍石のみを集めることとなる以前に手に入れたもの。

残念ながら裏面や一部の方解石は劈開となっています。

 

蛍石で著名なMinerva#1鉱山の歴史は半世紀以上も昔、1942年までさかのぼります。

青と紫のバイカラーや、青・紫・黄色のいわゆる”トリカラー”と称される蛍石をよく産出した産地であることや、また1990年代によく市場にこれらの蛍石を供給してくれたため今日でも蛍石市場においてよく名前をみかける産地ですし、この鉱山の名前を知っている蛍石ファンの方もきっと多いことでしょう。

 

なお、77年以前はMinerva#1、88年以降ではOzark-Mahoning#1鉱山と名前を変え、アメリカ最後の蛍石鉱山として95年に閉山しています。

(余談ですが、名前の変遷には運営会社の変遷が関わります。)

ただし、ラベル上では上記のとおり時代別に名前をわけてしっかりラベルされていることのほうが少ないと感じるぐらいですので、あくまで参考程度ということになりましょうか。

ちなみに、劈開を利用した、八面体蛍石などもこのミネルバを含んだcave-in-rockあたりが発祥だそうで。

(3/24/2016 追記)

Mahoning(Minerva#1) Fluorite アメリカ 蛍石

Mahoning Mine, Caive-in-Rock, Hardin Co., Ilinois

60mm×35mm×30mm 

 

青い蛍石を主として、内側から黄色→紫→青という順番で構成される蛍石。

俗にトリカラー蛍石と呼称されるもので、イリノイに特徴的な配色といってよいでしょう。多くのコレクターをイリノイ蛍石の虜にしてきた根源のひとつでもあり、私自身もトリカラーの標本は幾つ入手しても惹かれてしまいます。

 

この標本では結晶の上部にカルサイトがまぶされ、6~7mmの小さく可愛い蛍石がさらにその上に成長しており、一部ではバライトとの共生も認められます。再結晶の結果なのか良く発達したステップ構造もありと一粒で四度美味しい。

 

付属していたラベルにはMahoning Mineと記されており、これはMahoning社(1946年以降は合併しOzark-Mahoning社)の関与する鉱山の標本にそうラベルされたりします。

つまり、そのラベルが文字通りに解釈してしまえば1946年以前の標本になるわけですが、例えばW.L. Davis-Deardorff MineやMahonig#4 MineのようなMahoning社が当時掘っていた鉱山のどの可能性もあるわけです。加えて、Minerva#1鉱山は70年代以前はMinerva Oil Companyが関与しておりも複雑怪奇。

さらに言うならば、70年代以前の標本では単にCave-in-RockやHardin Co.、あるいは正確には地区として異なるのにRosiclareとだけ表記されたものが非常に多いのです。

それでこの標本に関して振り返ってみると、恐らくOzark-Mahoning#1(88年以降のMinerva#1のこと)のRosiclare Level、それも1992年前後の標本だろうと推測しています。

というのも結局のところ、前述のとおりMahoning社が掘っている鉱山を雑にMahoning Mineとラベルしたり、88年以降ではMinervaがOzark-Mahoning#1鉱山と名前を変えたとという部分をMahoningだけ切り取ってラベルを作ったり。そういうのが多いんですよね。

(3/26/2016 追記)

Minerva No. 1 Mine (Ozark-Mahoning No. 1 Mine), Cave-in-Rock Sub-District,, Hardin Co., Illinois, USA

43mm×22mm×21mm Largest = 17mm

 

同じくMinerva#1鉱山のバイカラー蛍石。(微妙にトリカラーかも)

紫色の蛍石がまず形成され、その上に水色の蛍石が形成されたのが良くわかるミニチュア標本です。

大きさや色は高価な標本には敵いませんが、透明感がとても良い感じ。

以前の持ち主のラベルが三つ付いていて、色んな人のところを渡り歩いて来たんだな…と。

よくよく調べたら恐らく A. E. Seaman Mineral Museumの学芸員の方のコレクションだった模様。この透明具合とバライトの付き方から閉山間際の92~93年あたりにRosiclare Levelでとれたものという線も大いにありそうです。

Rosiclare Level, Minerva#1 Mine, Ozark-Mahoningn Co., Cave-in-Rock, Hardin Co., Illinois, USA

Mined c. 1993, Ex. Roy Smith Collection M920/940

Cabinet Sized

 

典型的なクリーム色の犬牙状蛍石と、青い蛍石の共生標本。一部には重晶石もついており、裏面はいつもどおりの閃亜鉛鉱。

メインの青い蛍石が方解石で囲まれる具合が好きなのです。というかそこ、「こんなん方解石の標本やん」とか身も蓋もないことを言わない。

 

まぁ実際、客観的に考えれば方解石が中心の標本なわけですが、それの標本として考えても決して悪くはない標本。実のところ、海外のとある鉱物スレッドで2014年のデンバーレポートに載っていた標本なんです。それで、「あ、かっこいいなぁ~」と思っていたらネットの海に流れ出てきたので回収したんですね。元々はイリノイの蛍石で知られた人のコレクションだったのですが、ネットの海に出てくるまでの流通経路のどこかで(おそらく想像はついてますが)、元コレクターのラベルを捨てられているという(怒)

まぁそんな話は置いておいて、インパクトあって好きです。こういうのも。

(2019/2/22)


Rosiclare Level, Minerva#1 Mine, Ozark-Mahoning Co., Hardin Co., Illinois, USA

Mined c. 1992-1993

6㎝ wide

 

Minerva#1鉱山の蛍石と方解石が共生した美しい標本。

蛍石も方解石もともに主役をはれるだけのコンボピースでしょう。

 

標本について語るとこれだけで事足りてしまうわけですし、92-93年頃は標本の適切な保存が行われたこともあって非常に数多くの良質な標本が流通したなどの背景を話してもまぁそういうことなんでとなるわけで。

せっかく久しぶりにイリノイ州の標本を掲載したので、何をか語ろうかと思ったので、以下雑感。

 

蛍石を集めるようになって初めの数年は、これらの鉱山がすべて閉山してから15年強が経過しており、すでに良質な標本の入手が容易ではない中、憑りつかれたかのようにイリノイ州の蛍石に執着していました。

その数年の間に先行者効果のなんたるかを身に染みて理解し、理解させられてきました。ほんとうに年々困難になっていますよね。

(懐古厨や老害との罵りをまぬかれないのを理解しつつも、私ですら老害に該当するのであれば「おうふ」と言いたくなる気持ちは正直あります)

 

今でもその執着がないわけではないのですが、よく言えば私自身の視野がようやく広がったということでしょうか。いやでも宝石質でガラス光沢の青色がでてきたら余裕でブラッドヒートしますけどね。

(2021/10/1)


Rosiclare Level, Minerva #1 Mine, Ozark-Mahoning Co., Cave-in-Rock, Hardin Co., Illinois, USA

Miniature Sized

Mined in 1992

 

Minerva #1の紫。色合いとしては暗すぎない紫で、ファントムが非常にくっきりしている、1992年・Rosiclareレベルの物。やはりこういう細かい情報が付随している標本は嬉しいものです。

 

色の濃いエッジ、少し明るい紫、そして中心がまた濃くなるという。このように単色タイプでハッキリ綺麗なファントムは意外とイリノイでも少ないような気がします。適切にライティングすることでさらに映えますし、標本のど真ん中にあるバライトも良き。

裏面もしっかり結晶しており、一部の剥離痕除けばノーダメージ。90年代以降という標本に付加価値が生まれ適切な注意が払われるようになった時代ゆえに、良質な標本が数多く産したのでしょう。あなうらやまし。

 

でもやっぱり、青のほうが好き。

(2017/12/30 編)

Rosiclare Level, Minerva #1 Mine, Ozark-Mahoning Co., Cave-in-Rock, Hardin Co., Illinois, USA

Thumbnail Sized

Mined c.1991 - 1993

Ex. Sam & Ann Koster collection#24

 

ひとつ上の標本とほぼ同時期のMinerva #1の紫。イリノイの蛍石を長年集めていたコレクターがコレクションを手放したので、一時(といっても瞬間風速的な)いい標本が手に入りやすくなったのでした。

同時期の紫の蛍石といってもちょっと風体が違って、鮮やかな紫、黒に近く濃い紫、淡い紫と色がくっきり分かれて綺麗な色合いで面白いもの。ライトや日光にかざすとこの手の標本は美しく見えるんですよね~。どうみても闇属性な感じ。

 

実のところこの標本で一番面白いのは裏面がえぐれるようにガッツリとける食像をうけていている点。もともとその部分には重晶石があったのでしょう。結晶の角も食像を受けていて丸まっていたりとか。そういう部分。でもそこは見せない。そういうことである。

 

(2018/10/19)


Denton Mine

Rosiclare Level, South-End, Main Orebody, Denton mine, Harris Creek District, Illinois

Ex. Ross Lillie Collection

Mined in January/1983 by himself.   Small Cabinet Sized

Photo by Kiyoshi Kiikuni

 

Minerva、Annabel Leeと並んで有名なDenton鉱山の蛍石標本。

現地で"Burnt" limestoneとよばれる石灰石に、青から紫の透明度の良い、そしてちょっとイリノイっぽくなさもある蛍石と閃亜鉛鉱が共生するもの。この面白さ、珍しさ、美しさが同居する素晴らしさ...

しかし、これを見てぱっとDentonとわかるあなたは相当訓練されています。一般的にはDenton鉱山のイメージは紫色ですからね。

 

氏のいわゆる”イリノイ”産鉱物への情熱には以前から脱帽するばかりでしたが、そろそろお歳ということでコレクションの大半を手放したのが2013年。それから5年が経過しついにツーソンなどのミネラルショーへの出展もやめるということで、なんだか感傷的になって今回相応の写真を撮ってもらって掲載することにしました。

 

しかし実のところ、South-Endで同じポケットのものをもう一個持っているのです。それが日の目をみるのはいつになることでしょう。

 (2018/3/11)

Rosiclare Level, North-End, Denton mine, Harris Creek District, Illinois

Ex. Jesse Fisher coll.

Mined in 1984

6cm tall

 

現在ではプレミアがつき、数多流通しているとはとても言い難いイリノイフローライト。一口に「イリノイ」と称しても実際には非常に多くの鉱山があって、どの鉱山から産出したのか記載されていないことも多々あります。ほんの四半世紀前まではそもそもドラム缶に詰めて十把一絡げに売られていたわけですから、 まぁそうなりますわな。そんな中でも長年イリノイ州の蛍石に触れていると、これはどの鉱山だとか特徴から判別できるようになることがあります。例えばクリームイエローの重晶石の共生の仕方によっては、あーこれはDenton鉱山だなとか。そういった具合です。さらに変態を極めていくと、ピンクのストロンチアン石と水色の蛍石の共生具合によってはこれは1995年4月のMinerva#1鉱山だなとか、そんな感じです。

この標本も非常に1984年、Rosiclare LevelのNorth-End, Denton鉱山らしい蛍石です。黄銅鉱が蛍石表面に付着する様子、蛍石のやや赤みがかった紫と綺麗で透明なレモン色、そして貫入双晶を多数なしていること、誰がどう見ても1984年のDentonです。

そしてもうひとつ大事な点は、それらの情報がしっかり保たれて私のところまでたどり着いたことです。

当初はRalph Campbell氏からRoss Lillie氏が買い取り、後にRogerley鉱山で著名なカリフォルニア州のコレクターであるJesse Fisher氏のコレクションとなり、そして最終的には今うちにいる。こういった来歴までわかることが標本の持つ深みです。大切に扱っていきたい、「良い」標本です。

(2023/1/22)

Sub-Rosiclare Level, Bahama Orebody, Denton Mine, Ozark-Mahoning co., Harris Creek District, Illinois

Collected in October 1991 by Dee Roy Dutton from South Drift

Ex. Ross Lillie coll

8cm tall

Photo by Kiyoshi Kiikuni

 

ガラス光沢で淡黄色の蛍石の上に、グレープ色の蛍石が成長したゴージャスな標本。一部には貫入双晶も見られます。太陽光下でも十分に格好いい標本なんですが、上手にライトをあてるとさらにめっちゃ格好いい。

2015年の池袋ショー待機列に朝一で並びながら、オンラインで海外から購入した、何やってるのかよくわからない思い出の標本です。人はそれを必死といいます。いいんです。蛍石の前に人は平等なんですから。

 

こういった色合いの蛍石はとても写真の題材として難しいと考えていまして、野暮ったい紫とか暗ーい印象のものだったり、光を当てすぎてお下品な写真になっちゃったりと、苦慮する始末。もうこうなったらプロに頼むしかないってことで、お願いしてみました。よき。

2019年のツーソンメインショーで"Liar Fluorite"と称してこの手合いの蛍石をあつめてバックライトを個別にあてていた展示も記憶に新しいはずです。なるほど。

 

さておき、Denton鉱山を語るうえで外すことができないのが、Bahama鉱体です。なかでも1992年頃に”Bahama Pod”から産した琥珀色のまるみを帯びた方解石やそれと共生した蛍石は非常に美しく、高く評価されるものです。90年代中盤にはありふれた標本だったと言われますが、今となっては。こんなことばかりです。コレクターをするということは。

この標本はその1992年の直前、91年10月に産した蛍石です。Bahama鉱体の蛍石の特徴は無色から淡い黄色の蛍石のうえにモザイク状に紫色の蛍石が成長する点で、まさしくといったところでしょう。

(2023/3/5)

Denton mine, Harris Creek Sub-District, Illinois - Kentucky Fluorspar District, Hardin Co., Illinois, USA

Miniature Sized

 

有名鉱山であるDentonのバイカラー。少々ダメージがありますが、透明度と紫・黄色の彩度、照りがよい標本。よく観察すると一部に小さな貫入双晶が存在しています。

イリノイの蛍石で貫入双晶を確認できる事はさほど多くないため、そういった意味ではいいサンプル。勿論探す気になればイリノイの貫入双晶もたやすくとまでは言いませんが、見つけられますけどね。

そして標本下部の解けている感じから察するに、1981-1983年ごろにRosiclare Levelで採取された可能性が高いのではないかと推測しています。

 

Denton鉱山は、1979年から1994年にかけてOzark-Mahoning社のもとで稼行した鉱山で、現在流通しているイリノイ州の蛍石の標本の中ではMinerva#1鉱山の次に多いと思われます。

よくある色合いは濃い紫の蛍石や、紫と黄色のバイカラーになっているものです。

Rosiclare LevelとSub-Rosiclare Levelの標本が知られており、少なくとも私はBethel Levelの標本はみたことがありません。またDentonの標本ではBahama-Podの方解石もとても美麗で良く知られたものですが、現在は入手がとても困難。

(2018/3/11 改訂)

Denton mine, Harris Creek Sub-District, Hardin Co., Illinois, USA

Miniature Sized  Largest  Crystal = 14mm

Attr: Rosiclare Level, South-End    Mined c. 1981

 
Denton鉱山でも変わり種の黄色い蛍石と褐色の閃亜鉛鉱の組み合わせ。

蛍石自体はそれほど大きいサイズではありませんが、宝石質なレモンイエロー(とちょっとだけ空色と紫のゾーニング)が母岩の閃亜鉛鉱と良いコントラストで綺麗。

ちなみに結晶表面には紫色の斑点が散らばっており、結晶格子のゆがみによるものらしい。

 

また、ライトを当ててみると閃亜鉛鉱もオレンジ色が強調されてきます。

ここの鉱山も紫から青、黄色、はたまたトリカラーだったりと色んなタイプや共生鉱物がでてきて面白い。

(2017/5/3 編)


Rosiclare Level, Denton mine, Harris Creek Sub-District, Illinois - Kentucky Fluorspar District, Hardin Co., Illinois, USA

36mm×31mm×25mm   

 

紫色の蛍石に眩く輝く犬牙状の方解石、そして閃亜鉛鉱のベッドというデントン鉱山でもおなじみの組み合わせと言えるだろう標本。

ただこの組み合わせは、エルムッド鉱山のものが最も浸透しておりイメージしやすいのだろうか、他人に見せるとするならばまず一番に「エルムウッド鉱山のもの?」と聞かれるのやもし。


蛍石は1㎝未満で方解石も1cmちょっとでしかなく、どれがこの標本のメインというよりも、蛍石の紫、閃亜鉛鉱の鼈甲色、そして方解石の淡黄色の輝きの調和がメインに思えます。

ただ、実際これらが織りなすコントラストはとても美しいのです。


そして閉山してから20年以上が経過するこの鉱山が往時に産出していた標本のバリエーションの豊かさはいかほどの物なのだろうかとも思います。




Annabel Lee Mine

Sub-Rosiclare Level, Annabel Lee Mine, Ozark-Mahoning Company, Harris Creek District, Hardin Co., Illinois, USA

Mined in 1987.  Collected by Ross Lillie.

Miniature Sized

 

イリノイの有名鉱山のひとつ、Annabel Lee鉱山の蛍石と閃亜鉛鉱。

最大で1cmほどの透明でうっすら紫色の蛍石が、きらめく閃亜鉛鉱の上に乗っかっています。

紫色とは書きましたが、ラベンダー色から青紫色のゾーンが幾つも存在していてこれがまた可愛い。

よくよく見ると閃亜鉛鉱結晶はいくつか蛍石にインクルージョンとなっており、その点も良いポイント。

 

イリノイ蛍石の専門家・Ross Lillie氏が1987年に採取した標本の一つ。

 

Annabel Lee鉱山自体は、Cave-in-Rockに若干の陰りが見え始めていた1984年頃からOzark-Mahoning社によって運営されていた鉱山です。

この地区で最後にスタートした鉱山でもあり、なおかつイリノイ州でもっとも最近まで稼働していた鉱山の一つでもあり(もうひとつはミネルバ鉱山)、その名はエドガー・アラン・ポーの最後の詩「アナベル・リー」に由来します。

稼働していたのは僅かに10年あまりですが、Bethel levelから出たレモンイエローで端が淡い青色の蛍石などなど、綺麗な標本を数多く世に送り出した著名な鉱山です。

 (2017/9/13 編)

Bethel Level, Annabel Lee Mine, Ozark-Mahoning Company, Harris Creek District, Hardin Co., Illinois, USA

Mined c. 1985-1988.  Small cabinet Sized

Ex. Ross Lillie collection and Ex.Koster Collection

Photo by Kiyoshi Kiikuni

 

さて一つ上の標本でも言及したBethel Level。

イリノイの蛍石にこだわり始めなければ、きっとAnnabel LeeのBethel Levelには手をださないでしょう。St. Louis Level(あるいはCadiz Level)がありますって?それはさらに深みなので、今は置いておきます。

というのもイリノイの蛍石鉱山として最終盤までアクティブであったことから、Sub-Rosiclare Levelの紫色を基調とした標本はまだ比較的よく見かけるのです。対してBethel Levelのものは晶洞が狭い傾向があり採取するのが難しかったとかで、そもそも標本数自体が少ないんです。

その特徴は何といっても、ほかのイリノイとちょっと違った趣をもつレモンイエロー。それにしばしば水色から青の薄いエッジや、とがり気味の方解石を伴います。

この標本もそんなBethel Levelのひとつ。閃亜鉛鉱を母岩として、お米のような方解石と伴って、5cmもあるレモンイエローと青の鮮やかな対比。これが何とも美しいですよね。

 (2019/1/2)


St.Rouis Level, Annabel Lee Mine, Ozark-Mahoning Company, Harris Creek District, Hardin Co., Illinois, USA

Mined in June/1989

30mm×20mm×20mm

Celestine: 17mm

 

これもAnnabel Lee鉱山からの標本で、蛍石と天青石とちょっぴり閃亜鉛鉱の組み合わせ。

 

多少白身がかった青い天青石と、母岩にはメインの蛍石より小さい蛍石結晶数個と閃亜鉛鉱もちょっぴり結晶が付いているのがうかがえます。

 

正直言ってしまえば、どちらかというと天青石メインのサムネイル標本。

蛍石の色合いはこの鉱山でも良く見かける紫で、透明度は良いものの剥離の痕があり上級とは確かに言い難いかもしれません。

 

一度海外サイトで見かけたときにタッチの差で購入できず、手元で見てみたかったなと思うこと数か月、奇遇にも石友のコレクションに納まっていることを知り、私が所蔵していた逆シチュエーションの蛍石標本とトレードすることになったという標本。

(ある意味では狭い趣味です、逃してしまった標本が知り合いの手元にあったというシチュエーションを経験したことのある方も多いのではないでしょうか。)

 

しかしそこまでするには理由も勿論存在します。

それはCave-in-Rockなどを含むこのIllinois-Kentucky-Fluorspar-Districtでは天青石が殆ど出てこないからなのです。

 

97年のミネレコ誌には”この地域では過去4か所でしか天青石の報告がないとあり”、実際に私自身知っているところではこのAnnabel鉱山の物とMinerva#1鉱山のものしか見たことがありませんし、

この形状の天青石はAnnabel Leeのものしか知りません。

(ミネルバ鉱山のものは1995年にいくらかの天青石が採集されていますが、形状が結構違うのです。)

 

そう、今回は紫色の蛍石結晶に天青石の結晶が1つキッチリと組み合わさった理想形だったわけです。

そしてしっかりとSt. Louis Levelで1989年にとれたという以前の持ち主のラベルが付いていることもコレクターとしてはとても嬉しいものです。

 

ちなみに幾つかの資料・ネット上の写真それから手持ちの別標本を見比べる限り、Annabel Lee鉱山では天青石が蛍石と共生する場合は紫色の蛍石のようです。

 


Annabel Lee Mine, Ozark-Mahoning Company, Harris Creek District, Hardin Co., Illinois, USA

50mm×50mm×35mm


アナベルリー鉱山に限らずともイリノイ州の蛍石でよくある色合い、よくある共生の標本。


色合いはくすんだオレンジと紫が入り混じったハロウィーン・カラー、もっさりとした方解石に白い重晶石、そして黄銅鉱の粒粒。

私が集め始めた何年か前に比べても、輪をかけて入手に苦労を要するようになった色鮮やかな青や黄色、バイカラーにトリカラーと比べるとさほど訴求力のある色合いではないかもしれません。


ただ色がイリノイの上品に比べて見劣りするからと言って、形や共生を考慮するとこれが中々見ごたえがあるものです。 もりの先端に見えるかのような結晶形(あるいはセプターと言ってもいいかもしれませんが。)、くぼんだ部分に群れる方解石、さらに蛍石の表面にこれでもかと山盛りになった方解石。この眺めがなかなかの好み。ちょうど写真の1枚目のアングルでしょうか。


しかしこの鉱山で一番欲しいものはレモンイエローとスカイブルーの結晶なのには変わりがないのであった。

St. Louis Level, Annabel Lee Mine, Illinois
Mined in August/1988
Ex. Ross Lillie coll
4.5cm
この蛍石もまた思い出深い標本です。
まずイリノイ州の蛍石はかなり稀に貫入双晶になることが知られており、私自身いくつか見かけたり入手したりしているわけですけれども、これだけ綺麗に貫入双晶に、いわゆるダブルツインとなっている標本はほとんどないんですのね。しかも、青紫、紫のバイカラーで綺麗なファントム。最高じゃんね?
一方で、産出年月や箇所がわかることも蛍石マニアとしてはとても嬉しい点です。アナベルリー鉱山の蛍石はBethel Level, Sub-Rosiclare Levelの標本がよく知られますが、最も掘り進められたSt.Louis Level(またはCadiz Levelとも)の標本は比較的珍しいのです。St.Louis Levelはイリノイでは珍しい天青石の良質な標本を産出したことでも知られていますよね??
さすがはRoss Lillie氏のコレクションといったところ。2013~4年にかけて血眼になって探し、著名鉱物店に突撃してようやく入手できたのでした。しかし、供給がコレクターの放出しかない状況ですから、年々良い標本が手に入れづらいイリノイ蛍石は魔境なのでした。
(2022/2/4)

Crystal Mine

Crystal Mine, Cave-in-Rock, Cave-in-Rock Sub-District, Illinois - Kentucky Fluorspar District, Hardin Co., Illinois, USA

Collected in September/1970

60mm×44mm×38mm

 

下の標本に続き入手したCrystal鉱山の蛍石。これも産地がはっきりわかっており、なにより採集した月や採集した人物までわかるというある意味マニア垂涎の情報の塊でもあります。

 

これ本体としてはイリノイ州の蛍石らしい黄色紫水色のトリカラーですが、綺麗ではあるものの発色は今一つといったところでしょうか。また、ミネルバ鉱山の蛍石などでよく見られるように、バライトが溶けだした結果丸くえぐられたように見える部分が存在しています。見方によっては切り立った崖や、メサに近いような印象をうけます。

 

なんにせよ、クリスタル鉱山で採集年月がわかることがとてもおいしい。細かいクリスタル鉱山の情報は↓に。


Rosiclare level, Crystal Mine, Cave-in-Rock, Cave-in-Rock Sub-District, Illinois - Kentucky Fluorspar District, Hardin Co., Illinois, USA

Miniature Sized    Largest = 31mm

Mined 1940.

 

探し求めていたCrystal鉱山の蛍石。

色は内部が黄色でその周りを紫色の結晶が覆い、一部に黄銅鉱がついていたり内包したりとこの鉱山らしい趣き。

光にすかして見るとよくわかるのですが、幾つものゾーニングが存在し単純にまったり二色というわけではないところも良い。

サイズ・形もともに良く、一部ではエッチングも見られます。

しかし、この標本のミソは何と言ってもしっかりとCrystal鉱山だとわかることです。

 

このCrystal鉱山はそのクリスタルという名が示す通り、綺麗な結晶が産出したと伝えられる鉱山で1931年以前から1976年まで稼働していました。

しかし、稼働していた年代が古く間に二次大戦を挟んだためか、現状この鉱山だとしっかりラベルされている標本はほぼ存在しません。大抵大雑把にCave-in-RockだったりHardin Co.と、時には別の鉱山であるMinervaなどとラベルされてしまうことも多く、産地を気にする人にとっては大変もどかしい感じなのです。

ですから、Crystal鉱山とわかる標本はイリノイ・コレクターにとって垂涎の的と言ってもいいかもしれませんね。

これは運よく鉱山の地主の手元にあったということで、採掘年もレベルもわかるというコレクター冥利に尽きる標本です。


Victory Mine

Rosiclare Level, Victory Mine, Spar Mountain area, Cave-in-Rock, Hardin Co., Illinois, USA

Ex. Dr. Perry& Annne Bynum Collection

Collected c. 1960's

35mm×35mm×20mm

 

アクアマリンに近いような青、エッジが紫という蛍石にペールイエローの方解石がのったミニチュア。

 

方解石の劈開がいくつかあるために高価な標本というよりは安価に安価標本ですが、蛍石のユニークな色合いにやられてしまい最もお気に入りなミニチュア標本の一つ。

透明度が素晴らしいですし、なにより色の鮮やかさと対比が本当に好みなのです、そしてVictory鉱山というイリノイ州の鉱山の中では比較的レアと言ってもいい産地であることも◎

 

前の持ち主であるDr. Bynum氏はアメリカのosteopathic physicianで、1950年代~70年代にかけてCave-in-Rockに度々採集にきていたコレクターとのこと。この標本も氏が1960年代にVictory鉱山で採集したものと思われます。1980年代以降のものと比べるとただ単に”cave-in-rock”や”Hardin co."とだけラベルされてしまうものが圧倒的に多い1960年代の標本において、しっかVictory鉱山産であると分かる形で現存し、私自身のキャビネットの中に納まるのは嬉しいものです。

(3/25/2016)

Rosiclare Level, Victory Mine, Spar Mountain Area, Cave-in-Rock District, Southern Illinois

63mm×48mm×20mm

 

幾つかの本等において美しい標本を産出したとか、かつて主要な蛍石鉱山の一つだったと名前だけ触れられるイリノイ州・Victory鉱山の蛍石。
今年のツーソン後にとある業者が数個放出していたものの一つ。


外側が濃い紫色で、中心部分は濃い黄色で透明感も良いですが、何よりも緑色がかったロジクレア・サンドストーンの母岩がしっかりついているのが嬉しいところ。
裏側にはちょっとだけ方解石が付いています。
結晶表面はテトラヘキサヘドロンが強く表れていますが、これと紫と黄色の組み合わせはこの鉱山の特徴の一つなんだとか。

 

追記:2014年末現在、いくつかのウェブショップにおいてCrystal/Victory Complexの新産であるとされる蛍石が出回っているのを確認しています。これらの2つの鉱山は閉山してからおよそ半世紀になるため、少々疑問に思い有名なRoss c. Lillie氏に確認してみました。

その結果、標本鉱山として再開するなどの公式な試みが行われているわけではなく、コレクターの方々が中に入って採取しごく少量を流通させているとの事。

 

 


M.F.Oxford #7 Mine

Bethel Level, M.F.Oxford #7 Mine, Ozark-Mahoning Co., Cave-in-Rock, Hardin Co., Illinois, USA

Ex. Dr. Perry& Anne Bynum collection.  Mined c. 1967

63mm×39mm×30mm

 

M.F.Oxford #7 Mine。 またの名をMahoning No. 7 Mine、あるいは鉱夫の間では単純に#7と呼ばれたといいます。

ミネルバ・デントン・アナベルリーの3鉱山に比べるとずっと知名度は劣りますが、1950年代~70年代に多くの蛍石を産出した鉱山の1つで、出回る標本はBethel Levelのもののみの産地です。

蛍石の色合いとしては、黄色をメインとしてエッジが青か紫のものが典型的で、方解石や黄銅鉱との共生が良く知られています。

 

ひるがえってこの標本。黄色いコアに紫の薄いエッジ、純白の方解石の共生とM.F.Oxford #7 Mineの典型例と言えるのではないでしょうか。

そういった視点を抜きにしても、黄色と紫のバイカラーに方解石のコントラストはやはりイリノイ州らしくて綺麗ですし、蛍石の一部はエッチングの影響でえぐれているのもやっぱりイリノイだなぁと思うところです。

Ref.

Perry . B. L, 1973

Personal Communication with Ross C. Lillie



Saline Mines

North Green/East Green Mines, Saline Mines, Ozark-Mahoning Group, Cave-In-Rock Sub-District, Hardin Co., Illinois, USA

55mm×35mm×30mm

Attr: Bethel Level, North Green Mine


イリノイ州・Cave-in-rockでもまれに見かける産地であるSaline Minesからの標本。


少し薄めの黄色い蛍石をメインに、1~2mm程度水色のゾーンが覆うという結晶群になっています。

黄色と水色の間には紫色の細か~いラインが一本入っているので、トリカラーと言えなくも?

共生鉱物はスパイキーな方解石と黄銅鉱という定番の組み合わせ。

ある意味よくあるタイプの標本と言えるかもしれませんが、産地が珍しいので手を出したという感じ。


Saline MinesはNorth Green鉱山、West Green鉱山、East Green鉱山の3鉱山を合わせた総称で、この3鉱山全てがOzark-Mahoning社によって所有されていました。

この標本自体はNorth Green/East Green Minesという玉虫色の表記がなされていましたが、黄色メインに薄い青のゾーンというとてもBethel Levelらしい風体で、恐らくNorth Green Mineのほうだろうとふんでいます。

そのNorth Green Mineは1970年代まで稼働していたようで、80年代までは標本が採集されているようです。



Cave-In-Rock mine

Cave-In-Rock mine, Cave-In-Rock, Cave-In-Rock Sub-District, Hardin Co., Illinois, USA
40mm×25mm×15mm  Largest = 10mm


イリノイの古い鉱山、Cave-in-Rock鉱山のミニチュアサイズの標本。
砂岩の上に最大1㎝強の紫色の結晶が立体的についています。


形は直方体となっていて、これが砂岩を囲むように配置されていて…高価な標本では全くないのですがとても私の好みの配置なのです。
よく見ると結晶も紫色の濃い部分と薄い部分が存在していますし。
レアな鉱山のものなんで、綺麗でなくても嬉しいところなのに…。

Cave-in-Rock鉱山は1931年以前に開発された古い鉱山のひとつで、Cave-In-Rockという名前の村の4マイル北西、Lead Hillの北東、Sparmountainの西にあったとされる鉱山です。ですから、Crystal鉱山などと並んでCave-in-Rock Subdistrictで最も早く開発された鉱山の一つと言えるかもしれません。
今回はひょんなところから入手しましたが、普段Cave-in-Rockというとこの鉱山のことではなく、大きくMinerva鉱山などを含んだこの一体を指すのでなんともヤヤコシイ。

そして案の定、「Cave-in-Rock地区のどこかの鉱山だろうから」ということで"Cave-in-Rock mine"とラベルしているケースも幾つか見受けられて…

この標本は違うよね??



Shipp & Covert Mine

Rosiclare Level, Shipp & Covert Mine, Lead Hill, Cave-in-Rock, Sub District, Hardin Co., Illinois, USA

EX. Ross C. Lillie Collection, RCL 2202

Mined c. 1920s- 1930s

 

イリノイ州の中でも非常に珍しいShipp and Covert鉱山の標本。

ネットでは数個ほど今までに見かけたことがありましたが、実物を目にするのは初めてでした。

 

イリノイ州の他鉱山の標本と比べると別に綺麗なわけでもないのですが、産地が珍しい、そして1920年~30年代にかけての標本だろうという2点が、蛍石マニア(イリノイ)の心を非常にくすぐります。

 

微細な水晶に、白鉛鉱に覆われたと思われるガレナ、そして紫の蛍石の組み合わせ。そもそも水晶と蛍石が共生した標本はイリノイ州の一部からしか出回りません。

蛍石自体は1㎝程度、よくよく見るとファントムがあってきれいなのですが標本全体としては地味です。

 

なおこのLead Hill一帯は、Cave-in-Rock Districtの中ではSparmountainと並んで最も早く開発されています。年代にすると1910年代末から20年代ぐらいでしょうか、 1920年代のアメリカといえば第一次世界大戦を終え、禁酒法や世界恐慌の時代です。なんにせよ100年近く前のもので、Historicと呼んでも差し 支えないことでしょう。

この時代の鉱山ものが、産地がはっきり分かる形で現存していること自体が蛍石コレクターとしてはうれしいのものです。

 

元は蛍石好きでイリノイを集めるとなると、有名なRoss Lillie氏のコレクション。氏のラベルには意訳すると、”珍しい産地からのClassicな蛍石(Spar)と水晶の組み合わせ。ガレナの上にあるのは恐らく白鉛鉱だろう”と書かれています。



Illinois - Kentucky Fluorspar District

Illinois - Kentucky Fluorspar District, Hardin Co., Illinois, USA

15mm×14mm×13mm Largest = 15mm


第36回名古屋ミネラルショーにて購入。

イリノイの青い蛍石。

欠けはあるし、劈開はあるしでダメージ満載なおかつサイズも小さいですけれど、やっぱりこのマリンブルーって色は綺麗なものです。

この色合いは飽きませんね。

以前に比べると値段はべらぼうに高いですが、それでも綺麗なんだから仕方がない。


詳しい産地はお店の人に聞いても「わからない」とのことでしたが、このページにあるMinerva#1のものと色合い、後ろのエッチングなどが酷似していますので、おそらくこれも、Minerva#1なのではないかと考えています。

しかし友人曰く「オハイオ川(もしくはそれにそそぐ小川)のあたりでとれた云々とのこと」ということなので、産地不肖なのもさもありなん。