イリノイ州の蛍石 その2

 

イリノイ州で定番の産地と言えば、1990年代まで現役であったMinerva#1鉱山、Denton鉱山、Annabel Lee鉱山の3つ、あるいはもっと大雑把にCave-in-Rockがとても有名ですよね。

 

しかし、イリノイの蛍石という200年近くにもなるその歴史の当初においては、かの有名なCave-in-RockではなくRosiclareという場所が採掘の中心でした。

さらに言えば、当初は蛍石を目的として採掘していたのではなく、方鉛鉱に含まれるわずかな銀を目的にこの一帯では採掘が行われ、蛍石はズリなどに放置されていたと言います。

しかしその後、南北戦争を経て20世紀へと入り、第一次世界大戦という時代の荒波の中で蛍石の価値も大きく変化していきます。

そう、1880年代に始まったら新しい製鉄法の中で、蛍石が溶剤として使用されるようになったのです。

そして1900年代に入りさらに蛍石の需要は高まる中イリノイで中心的な鉱山を稼働させていたのがThe Fairview Fluorspar and Lead Companyという企業でした。

ちょうどその第一次世界大戦ごろにおいてイギリスのDurhamやCornwallと、このRosiclareが蛍石の二大産地だったようです。

 

このページではそんなCave-in-Rockではないイリノイ、RosiclareやそもそもHardin Countyではないものを扱います。

 

 



Blue Diggings Mine

Blue Diggings Mine, Rosiclare, IKFD, Hardin Co., Illinois, USA

Large Cabinet Sized

 

Rosiclareの中でもBlue Diggings鉱山という、滅多に見かけないどころか、宝くじレベルにはレアな産地の蛍石。

色は外側から紫・黄色・無色となっており、そのサイズも相まってとてもカラフルでインパクトの強い標本です。最大辺が15cmもある普段なら見向きもしない大きさなのですから。

勿論それだけ大きければ重量もありますし(2kg越)、蛍光もかなりのものですし、結晶の骸晶も素晴らしく、複雑な様子をみせています。

結晶の一部にはクリーム色の方解石がビッシリとついていて、これはこれでアクセント。

 

Blue Diggings鉱山は遅くとも1910年にはThe Fairview Fluorspar and Lead Companyによって採掘されていた鉱山で、青い蛍石がとれたことからこの名前になったようです。生憎と本標本は青くないですが。

現代においてRosiclareの蛍石の中で、どこの鉱山かわかるものは悲しいほどにレアなのです。とある人が言うには「Rosiclareの蛍石で鉱山名がわかるのものは、その殆どが1950年代に採集されたもので、それも十二分にレア」とのことですが、そう言われると逆に集めたくなるのがコレクターの性ですよね。

 

-Tips-

イリノイの蛍石でも、単純にイリノイとだけ書かれていればCave-in-RockなのかはたまたRosiclareなのかそれとも???と思うことはよくありますよね。

そういう時のための、簡易な鑑別法としてRosiclareのものは蛍光するというのがあるそうです。一般的にCave-in-Rockのような接触交代鉱床の蛍石はハイドロカーボンを含まなければ蛍光しません。それに対して、Rosiclareなどで典型的なVein typeの鉱床はハイドロカーボンがなくても蛍光することがあります。実際、この標本でもわりとしっかり蛍光します。


Gaskins Mine

Gaskins Mine, Minerva Oil Company, Pope Co., Illinois, USA

Small Cabinet Sized

Mined in 1970's

 

イリノイの蛍石が好きなコレクターならご存知でしょうけれども、イリノイものがほぼすべてHardin Co.のなか、ごく稀にお隣Pope Co.の蛍石というのが存在します。ご存知でしたか?

Knight MineやFairview Mineであるような蛍石を見せたときに、絶対パキスタンと幾つかの業者やイリノイコレクター笑にDisられたこともあるぐらいなので、単にイリノイ好きというのはあてにはなりません。そういう輩にはBen E. Clement Mineral Museumにでも足を運んでほしいものです、私もいつか行きます。というか次にアメリカ本土に行く機会があれば絶対行きます。

 

まぁそれはそれとして、Minerva Oil社のもとで採掘されたGaskins鉱山からはクランベリーとディープブルーのバイカラーが美しい独特な蛍石が産したことがあります。時は1970年代前半、数ポケット空いたのだとか。これもそんな中のひとつ。イリノイが好きなコレクターにはGaskinsと一目瞭然の、この独特の色合い。方鉛鉱や方解石と共生しつつ、一部の結晶面は灰色。とっても魅力的ですよね。

Pope Co.には他にも本当に、本当にレアですがHenson MineやBarnett Mineの蛍石なんていうものもあります。気になる人は探してみてください。

(2018/1/1)