オハイオ州の蛍石
White Rock Quarry, Clay Center, Ottawa County, Ohio, USA
5cm tall
Collected c.2006
アメリカの蛍石と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
最初に思い浮かぶのはイリノイだろう。異論はないと思う。次点はテネシーかニューメキシコだろうか。そうすると、これらに次ぐものは何か。そう、オハイオだ。オハイオの茶色い蛍石だ。いや、コロラドとかニューヨークかもしらんけどね。
では、オハイオ州の蛍石といえば。もちろん、White Rock Quarryである。
蜂蜜や琥珀を思わせる独特で茶色の蛍石が、天青石と共生する姿は容易に脳裏に浮かぶ。しかも蛍石は透明で、ゾーニングも素晴らしい。アメリカではRoot Beerと形容される独特の茶色だ。いずれにせよ、脳裏に浮かばないやつはモグリだ。Root Beerはうまいから飲まずぎらいせずに飲め。
どうやらClay Centerの茶色い蛍石は1930年代より良く知られたようだ。不透明なものも多く、蛍石コレクター以外の目を惹かないことも正直多い。この四半世紀で特に良質だったものは、2006年から2007年にかけてGail Deckらによって世にでたもの。数百にも及ぶ透明で鮮やかな茶色い結晶が世にでまわった。当然市場には良質な標本が、安価で供給されることになる。近年はならないことも多いけど。かくいう私も、駆け出しコレクターだった2012年頃に、現在では考えられないくらい安価で、普及品を入手した記憶が忘れられない。
その後の話は、大体いつもと同じである。普及品の欠けに堪えられなくなり、そうこうしているうちに標本は市場から淘汰され…良質な標本は非常に入手が困難となり……10年以上も経ってからようやく納得いくものを入手することができた。よく似た文章をなんど書けば気が済むのか。
違う点があるとすれば、10年前でもこのクオリティのものは、なかなかなかったと思える点だろう。実物はぶっちゃけ写真よりいい。メインの結晶には殆どダメージがなく、透明さ、色、美的なバランスどれも高いレベルだろう。これで満足できなくなったときは、身の破滅がまっていることだろう。すでに滅んでるようなもんだけどね。
(2024/4/19)
Stoneco Auglaize quarry, Junction, Paulding Co., Ohio, USA
Thumbnail Sized
Ex. Paul and Dawn Dunning Collection
蛍石コレクターの間では有名なオハイオの紫色蛍石。
それのサムネイル標本かつクラスター。
砂岩の母岩上で存在感を示すとても綺麗なファントムは紫苑の色。
この産地のものは幾つも見ましたが、自分にはこのサムネイルが一番バランスが良く完成していると感じます。
Auglaize Quarryの紫色な蛍石は稀産とされ日本ではあんまり見かけませんでしたが、14年ツーソンショーより後で一時期でまわりました。しかしそれも一時的なもので、結局1年後にはまたレアものに逆戻り。こういう物は出たときに確保しないと厳しいということか、そういえばオハイオの蛍石と言えば以前はあれほど見かけたWhite Rock Quarryのものですら、良品はここ1年で高騰していますし。
なおこれは、コレクションから察するに80年代、90年代ぐらいのものでしょう。
Stoneco Auglaize quarry, Junction, Paulding Co., Ohio, USA
14mm×15mm×16mm
オハイオの有名な紫色の蛍石。とちょっぴり方解石。
外側はカラーレス、内部が紫色という独特な感じがとても好み。
ちなみに、有名な茶色いオハイオ産蛍石と違い、あんまり蛍光しない。
なお、この産地のものには炭化水素の薄い皮膜によってイリデッセンスを持つ蛍石が産出したり、この紫色の蛍石と組み合わせて産出してきたりします。
Auglaize Quarryの蛍石は同じオハイオの茶色い蛍石と違う綺麗さを誇るものの、そもそも稀産であるため日本ではあんまり見かけません。
と書いていますが、14年春ごろから日本でも大量に見かけたため「もしや…」と思ったら、案の定14年ツーソンショーで一定の放出があったようです。
この産地の蛍石は、以前業者に注文してお金を振り込んだ後に先方から”紛失したから返金させてくれ”というメールが届いて入手できなかったりと、因縁の産地なので入手できただけでもうれしい。
Bluffton Stone Co. Quarry, Bluffton, Richland Township, Allen Co., Ohio, USA
オハイオ州の中でも、見ないことはない産地Bluffton Quarryの蛍石。
苦灰岩(dolostone)にできた小さい晶洞ののなかに、紫色のジェミーな蛍石が何個も存在しています。
結晶のサイズは最大でも5mm前後とそれほど大きくはありませんが、幾つも散らばる様は見ごたえがあります。結晶をよく見ると、結晶の端は一際濃いワイン色になっているのが見て取れます。
このBluffton quarryは綺麗な紫or茶色がでるため上記のAuglaize Quarryと似ていますが、これまた綺麗な閃亜鉛鉱をともなったりすることや、そもそも産地のレア度という点で大きく違います。
この標本のようなファントムのある紫色の蛍石、ファントムを伴わない薄く紫色の透明~!な蛍石、オハイオらしい茶色い蛍石や、イリデッセントとよばれるような茶色い蛍石と大きく分けても4種類のタイプが産出しており、しかも綺麗な閃亜鉛鉱と共生したり(はたまた閃亜鉛鉱を内包したり!!!)、さらにはモディフィケーションもわりとありうるという夢のような産地でもあります。
しかし、その流通量のせいもあってかAuglaizeよりも流通量がかなり限られますし、そもそも知名度がないというそういう…。
Maumee, Lucas Co., Ohio, USA
17mm×10mm×9mm
Ex; Paul and Dawn Dunning Collection
Attr: Stoneco Quarry
オハイオ州・モーミーの蛍石。
サイズは2㎝弱のサムネイルと少々小さいですが、色と照りがとても良い感じで、まさにシャンパンみたいな色合い。
良くあるオハイオ州・Clay centerの色合いと似ているけれど、なんだかちょっと違う、そんな印象です。
オハイオ州・Clay Centerの茶色い蛍石や、Auglaizeの紫色の蛍石はある程度有名ですが、ここMaumeeもやっぱりオハイオ州らしく茶色い系統の蛍石を産出し、サイズ的には大きくても2㎝程度のようです。