Huanggangliang Mine

Huanggangliang Mine, Keshiketeng Co., Chifeng Prefecture, Inner Mongolia Autonomous Region, China

Miniature Sized

 

内モンゴルの青い青い蛍石。

瑠璃色と表現したくなるような青色が白い水晶に散らばっています。

 

今年14年のSainte-Marieショーで話題となったタイプで、その後結構流通しています。なんといっても、このNM州の一部やドイツのオールドコレクションでみられるような深い深い青色が魅力的です。

ちなみに、小さいものの結晶の形は八面体なのですが、大きくなるにつれてさらに丸みを帯びた面白い形になっています。こういったものは一度手元で見てみるのが一番でしょう。

 

このHuanggang鉱山は面白いものを産出することで有名な鉱山ですが、蛍石にも限っても、透明な八面体だったり、八面体の結晶が寄り添い合って青緑色と紫色が混じった球状に見えるものや、紫色の八面体、赤ピンクの八面体などなど色々なタイプを産出し続けている産地です。

今後も興味深いタイプの蛍石を産出しつづけることでしょう。

 

さてこの青い蛍石ですが、二つのタイプが存在しています。

一つはこの写真のように白くなった水晶のに青い蛍石が付いているタイプです。

蛍石の形は小さいものはルーズな八面体が多いのですが、大きいものではルーズな六面体で、面の中央はエッチングのためデコボコになっていたりします。

もう片方は、平べったい母岩の上にこまかーく青い蛍石が付くことで、母岩全体ごと青いなるタイプです。ですが断然前者の方が見応えがあります。またどちらのタイプにも共通して、青い蛍石の内部は緑色だったりします。

 

Note:

出回り始めてから数か月の間に様々な加工がなされていると噂が流れました。実際この独特な青い色と水晶、そして中国産であるということを考慮すると加工を疑うのも仕方ないのかもしれません。

私自身本物であってほしいと思ってはいるものの、真偽は定かではありません。ですが、参考までに”石友が染色などはないかと有機溶剤(トルエン、クロロホルム、アセトン、エタノール)それから塩酸につけて確認したところ色の変化はなかったのを確認している” ということだけ付け足しておきます。

(2017/8/20 編)

Huanggangliang Mine, Keshiketeng Co., Chifeng Prefecture, Inner Mongolia, China

4cm wide

Ex. Kyle Kevorkian collection

 

 

無色透明の蛍石といえば皆さんはどの産地を思い浮かべるでしょうか。

現在では古典的産地となりつつあると言わざるを得ない、ソ連崩壊前後を中心に産した圧倒的な透明度誇る Nikolaevskii鉱山を擁する極東ロシア・Dal'negorskを思い浮かべるでしょうか?

あるいは急性期から脈々と透明度の非常に高い蛍石を供給し続けてきた、アメリカ・New York州の苦灰岩採石場であるWalworthを思い浮かべるでしょうか?しかしこちらは、青みがさした結晶のほうがより珍重されるため、このas cold as ice cubeな冷戦はソ連に旗があがるかもしれませんね?

どちらにせよ、前者は90年代、後者は50年代~70年代が産出の全盛期であって、現代では入手が容易なものではないのですよね。

この錆び付いていそうな冷戦に新たな闖入者が現れたのが2010年代。中国・内モンゴルのHuanngang鉱山です。つまるところ新たな冷戦が幕をあけたわけです笑

 

 

さてHuanngang鉱山は前述の2産地とは異なって、非常に多彩な種類の蛍石がみられることもその特徴です。2021年の今日にいたるまで我々に披露し続けているモンスターのような存在と言えるでしょうが、その話はここではおいておくことにしましょう。無色透明な蛍石についてです。

たいていはこの標本のように八面体が中心の結晶です。純粋な八面体のものもあれば、菱形十二面体によって面取されたもの、立方体によって面取されたものなどバリエーションはありえますが、特筆すべき点は結晶のシャープさと透明度の両立にあります。この標本をみても結晶模型みたいだなぁって思いませんか?

 

 

(2021/4/2 )


Huanggang Mine, Chifeng, Inner Mongolia, China

Small Cabinet Size

 

綺麗な青緑色の八面体式蛍石が武骨な水晶の上にのる、恐らくは2011年頃産出のタイプ。

 

蛍石は最大24mmで小さいものを含め4つ確認できますが、光を当てると外側が緑で内側が群青色のグラデーションが確認できます。この手の暗く青みが強い緑は個人的にはとても好みです。

しかしHuanggang鉱山の蛍石は次から次へと新たなタイプが出回るためさっぱり把握しきれません。

どなたかしっかりと纏めた本でも作ってくれると嬉しいのですが。

(2017/2/8 編)


Huanggang Mine, Chifeng, Inner Mongolia, China

52mm×35mm×25mm

Mined c. 2015


珍しいものを次から次へと生み出している内モンゴル・Huanggang鉱山ですが、これは15年度に新しく出てきたもの。

あずき色の八面体結晶の上を覆うように、八面体の濃い青緑色の蛍石が成長しています。色味自体はHuanggangでよく見る色なのですが、組み合わせ的には真新しいでしょうか。


青緑の結晶と紫の結晶の間には数mmの隙間があり、微細な水晶らしきものが付着しており、恐らくは元々あずき色の八面体→水晶→緑の八面体で層をなしていたのではないでしょうか。

それが自然にか人工的にかはわかりませんが酸で水晶が溶け出したため、色の異なる蛍石の間に隙間がうまれていると推測します。

イリノイでよく見るタイプの1つ、バライトが溶け出してしまったものに多少似ているかもしれませんね。


ちなみにこれとは少し結晶形が異なりますが、バイカラーである点や水晶が溶けたと思われる点で似通った標本を15年のツーソン後にも見かけているのはいます。これは購入時期や複数の業者の出し方を見るに恐らく2015年度のものでしょう。



Huanggang Mine, Keshiketeng Co., Chifeng Prefecture, Inner Mongolia, China

27mm×20mm×15mm

 

これもまたHuanggang鉱山の蛍石。

一見するとすこし紫色で透明な蛍石といった趣ですが、d面とo面はスリガラス状になっており、加えてd面のみ若干強めに紫色が現れているという不思議な風体。

無色透明+紫色の掛け合わせにはエキゾチックな印象を受けます。

 

またいわゆる”水入り”の蛍石となっており、写真四枚目にあるようにいくつも気泡が確認できます。勿論標本を傾けると気泡も動くので、それをルーペで見ると楽しめます。

 

この標本は'15年・ツーソンショーからのものということで入手しましたが、おそらくは’14年度の秋ぐらいに少々出回ったタイプと同じもの。

別の人曰く「このタイプの蛍石で水入りを結構みた(要約)」とのことなので、水入りのでやすいタイプなのかもしれません。

Huanggang Mine, Keshiketeng Co., Chifeng Prefecture, Inner Mongolia, China

27mm×18mm×16mm

 

内モンゴルの一応ピンクな蛍石標本。

産地に典型的なヘデンベルグ輝石(灰鉄輝石)との共生ですが、流通しているものはピンク蛍石だけの分離結晶も多く、しっかりとヘデンベルグ輝石の上にピンク蛍石がのったものは案外珍しいのです。

メインではない八面体が一個かけているため完璧な標本ではありませんが、ある程度よくまとまったサムネイルなのでは。

 

スイスやフランスアルプスのピンク蛍石やペルー、パキスタンと言ったものとは経路の違うピンクですが、時にピンクと称されるメキシコ・Navidad鉱山の紫蘇色の蛍石と比較するとよっぽどピンク色です。

Huanggang鉱山のピンク蛍石にも色味・透明度の幅はありますが、どれも八面体式の結晶を主としています。しかしこの一大鉱山、ピンク蛍石の産出はいつまで続くのでしょうか。

(2017/7/24 編)

 

Huanggang Mine, Keshiketeng Co., Chifeng Prefecture, Inner Mongolia, China

Miniature Sized

Mined in August/2019

 

内モンゴルの新しい蛍石。

色の濃さと透明度を両立した赤と呼べるような標本から、この標本のようなピンク、もう少し小さい標本ではさらに淡いピンクも見られました。それゆえ中国内ではRed Fluoriteとマーケティングされたほど。

しかし写真でもわかるように、アスベスト(※鉱山主の談 正確にどの鉱物かは未定)で包まれたポケットからとれたため、蛍石にアスベストが内包して灰色に濁った標本が非常に多く、実のところ綺麗な標本は思うほど多くないように感じます。

一方で柔らかい鉱物に包まれていたことが上手く働いたのか、フローターの綺麗な八面体や八面体の連晶で我々も入手することができるという部分もあります。

中には方解石と共生した標本もあり、これもその一つ。

2019年のデンバー直前になって鉱物界を騒がせ、中国国内ですら価格の高騰をみており(同時に良質な標本も入手しにくかったわけですが)、あとは悪徳な業者のホワイトバランスいじった画像に苦慮したり、全然知らないヨーロッパ在住の某にマウントを取られたりしながらも、端正な標本を入手できたのでよしとしましょう。

(2019/10/4)

 

Huanggang Mine, Chiefeng, Inner Mongolia
Mined in 2022
3.5cm tall

2022年初夏頃に中国のディーラーで見かけたタイプのもの。紫色の八面体を基調として、いろいろほかの面もでることでFattyな印象をちょっぴり受ける蛍石と、硫ヒ鉄鉱のコンビネーションピース。
蛍石の可愛さと、金属のかっこよさの同棲。
向こうのデイーラーはアメジストフローライトとか言うてましたけど、まぁちょっとわからんくもない。
この1,2年は内モンゴルの蛍石とくればYindu鉱山と言った具合でして、2010年代と比較するとその勢いに衰えが見えつつあるようにも感じるHuanggang鉱山ですが、今後も色々きっと出てくるのでしょうね。
(2022/7/23)

Yindu Mine

Yindu Mine, Chifeng, Inner Mongolia, China

3cm wide

 

鮮やかな緑や紫からなるテリのよい立方体式の結晶で、秀でたファントムを認めることも多く、白雲母を伴うことが多い。言語化するとYindu鉱山の特徴は大体こんなところでしょうか?

福建省のいわゆる「タンザナイト」フローライトが一段落した後、2019年頃から流通量が大幅に増えるとともに往時のYaogangxianの良品を思わせるような風体の蛍石も多く、すぐ人気に火が付いたように記憶しています。2013年頃には少量ですがすでに市場には出回っており、Yaogangxianに似ているのでまぁいいかと思っていたら、あれよあれよという間にですね。やっぱり見つけた時に買うのが一番なんですね、この手の趣味は。

それはともかく、2021年になりようやくそれらしい標本を入手しました。

この緑と青紫のバイカラーがYinduらしくてとってもよきまるですのよ。

 

(2022/7/10)