Ruyuan Mine ,Shaoguang,Guangdong,China
Small Cabinet Size
2013年新産のアップルグリーン色をした広東省の蛍石。
透明度は湖南省・Xianghualingなどと比較しても劣ることもなく、照りもまずます良いもの。
産出当初のものは大きく階段状となった結晶が特徴的で、これもその一例。
その後も流通は1,2年ほど続いたが、当初のもほど大きく階段状となるものは見受けられなかった。
また2014年秋ごろに緑色の蛍石の表面を、透明度の高い青紫色の蛍石が一部覆うものも産出したが、どうやら限定的な産出だったようでワンシーズンで市場から姿を消し私自身も入手のタイミングを逃してしまった。
中国産ではよくある「どうやら色々沢山あるけれど気づいた時にはこのタイプはなくなっている。」というやつである。
(2017/1/29 編)
Yongchun, Quanzhou Pref, Fujian, China
Thumnail Sized
福建省の新産出蛍石。2016年後半にかけて産出したもの。
照りと透明度のよい青紫の蛍石で、一部からはタンザナイトカラーと称されていましたが、それも頷けなくはありません。透明で針山のような水晶と共生しているのも美しさを押し上げています。
湖南省DongpoやDongposhanあたりの物と色形がにていますが、水晶の付き方がちょっと違うのか。見分けはそう簡単ではなさそうです。
きっとこれは人気が出るだろうなぁと思いつつも、中国産鉱物も近年価格高騰が著しいなぁとも感じた一品になりました。なお、鉱山名はYongchun鉱山とのことですが、もしかしたら別の鉱山の可能性は大いにありそうです。何より見た目にノックアウトされたおかげで、中国物の新産に手を出してしまったわけなので、いろんな意味で今後の情報には注意を払う必要もあります。こういうあたりが非常に中国らしいというか、なんというか。
(2017/6/24, 8/10編)
Xia Yang Mine, Yongchun, Quanzhou Pref, Fujian, China
Small Cabinet Sized
Mined in early 2019
福建省のタンザナイトカラーと称される蛍石が世に出回り始めてから2年ほど。
ようやく鉱山の名前もXiaYang鉱山であることが大方判明し、淡い灰緑色の蛍石だったり、怪しい鮮やかすぎる青緑の標本だったり(これは照射されているという中国からの情報もあります)も出回るようになりました。
当初出たような、細かい水晶を伴って照りのある鮮やかな青紫の蛍石は、最早入手が困難なほどに人気で価値の高騰をみています。このタイプが本来 "Tanzanite Color"と言われたわけですが、そのあとに現れたピンからキリまでもタンザナイトカラーと呼ばれるようになったことには、セールスネームの功罪を感じざるを得ません。
それはさておき。2019年の3~4月ぐらいにも濃い青紫が綺麗な蛍石が出回りました。水晶は伴っておらず、オリジナルのタンザナイトカラーと比べるとやや色はダークで照りも弱いです。ですがそれでも、「まぁ悪くないんじゃない?」と感じるような蛍石。
実はこのタイプの蛍石でも、昨今鉱物界を騒がせた放射線照射があるんじゃないかと話題に上りました。そこで欧米や中国のコレクターとかディーラーの間で結構論戦があって。結局鉱山内にこのタイプの標本がある写真もでてきて、結論をほぼ得たんですよね。まずナチュラルだろうと。
今回は結論がほぼ得られたので良かったですが、疑念って一度もたれると中々払拭しづらいですよね。まさに悪貨が良貨を駆逐する、なんてのはやだなぁ。うへぇ。
(2019/6/28)
Xia Yang Mine, Yongchun co., Fujian, China
3cm wide
疑惑の標本です。まず標本について語りましょうか。淡くアップルグリーンに色付いた、大変透明度の良い蛍石で、なによりその端正な結晶形は特筆すべきものです。立方体を菱形十二面体で綺麗に面取りした、幾何学的な美を伴う結晶群と言えるでしょう。
さて、何が疑惑かと申しますとその産地です。
アメリカの裕福なコレクターから引き取った標本なのですが、氏はロシアのDal'negorskだと。確かにDal'negorskは非常に透明な無色の蛍石で知られていますし、立方体を十二面体で面取りした結晶も比較的よく見かけます。また時折Nikolaevskiy鉱山や2nd Sovietskii鉱山からは薄緑に色付いた同様の蛍石が出てくることもあります。
ですけれども、これはちょっと色味が違う。もうちょっとこれは黄緑色寄りなんですよ。そして内部にごくうっすらと紫色のファントムもある。面取りもダリネゴルスクのものにしてはザラつき(微細なステップ)もある。何より母岩が違う。ダリネの緑でこの黒色の母岩は見たことがない。って言うか、あの私、この手の特徴全てみたすもので、中国福建省のXiaYing鉱山があるんですけどと、思いました。思ったけど他のコレクターは誰一人として突っ込みやしないし、仕方ないんで直接売り手に聞いてみました。でも、「Russian100%」ときた。絶対に産地の不確かなものを売らない、これはオーストリアの某トップディーラーから購入したとまで断言されまして。まぁね、産地の類推ってあくまで類推ですからね、と思いながら聞いたんです。ラベルありますかって。そしたら、「引越しで無くしました」ってね。うん、そうなんだ、すまない。まぁどう考えてもこれ福建省産ですよね。ついでに購入年を聞くと2017年頃と。ちょうど福建省のタンザナイトカラー蛍石狂想曲が一段落して、同地の淡緑色の蛍石が出回り始めた頃でしたね。ドンピシャです。
ということで私の中では99.9%Xia Yingと考えてますし、もうさすがにそうラベルしちゃうレベルです。それを含めても標本の幾何学的な美しさが良すぎたって側面もあって購入しちゃいました。
後日談になるのですが、その業者さんはBethel Level, Annabel Lee鉱山から1985年から88年の間に産出したことであろう事が99.9%ぐらい確実なとてもとても興味深い標本を売られてましてね。蛍石に方解石が着いたものなんです。そしたらね、これは蛍石と水晶だって。方解石はこんな形しないって。ンヒィ∩(´;ヮ;`)∩
ここから得られた教訓はふたつです。
良い標本を持ってることとは最低限度でもいいからほんとに最低限でもいいから鉱物の知識があることの十分条件じゃないということです。知ってましたけどね。
それから今後も謙虚に学んでいこうということです。
そして蛍石はさいつよってことです。
以上Q.E.D.
(2022/1/21)
Nintoushan, Jinhua, Zehjiang Prov., China
Thumbnail Size
独特の青さを持つ浙江省の蛍石。その名は牛頭山。牛頭ってなんやねん。
記憶が正しければ、元々は2014年末か年が明けて2015年早々に極少量のみ流通したレアなタイプ。
その際は入手がかなうどころか出遅れ、石友が入手したものの写真をみて、中国産でこういった青もでるのか・・・と驚いた覚えがあります。何とか入手できないか悶々とした日々を過ごすこと数か月、15年の春先に第二陣が流通したため、飛びついたものがこの標本。
色合いは光源なしではエジプシアン・ブルーのような少しくすんだブルーであり、表面に微妙な骸晶があるせいか素の透明感は案外よくないです。
全体的にダメージがある標本も多いようで、この標本も大なり小なりダメージがあることに加え、ミネラルタックの着脱でも容易に劈開してしまうというあまりよろしくない特徴も持ち合わせています。
真骨頂は光源ありの時で、独特で鮮やかなブルーは見る者の心をきっと惹きつけることでしょう。
購入した際の情報によると、この一帯は中国でも蛍石の埋蔵量第二位の地域なんだとか。むしろ今まで流通がなかったこと自体が不思議なのかもしれませんね。
(2017/1/29 編)
Jingbian Mine, Zongyang Co., Anqing Prefecture, Anhui Province, China
Miniature size
安徽省・Jingbian鉱山の蛍石。
プラムな紫と青のバイカラーが印象的で、光をあてるとさらに綺麗なもの。母岩はドルージーな水晶で一部をおおわれ、ちょっとしたアクセントに。
以前より単にAnhui産蛍石として方解石が共生した紫蘇のような色合いの蛍石が知られていましたが、それもこの鉱山のもの。銅や金を目的として開発されたようですが、あまり詳しいことは解りません。16年秋ごろにこのバイカラータイプが出回りましたが、中国産蛍石でよくあるようにワンシーズンでほぼ流通しなくなってしまいました。
(2017/1/29)
Ma On Shan Mine, Sha Tin, New Territories, Hong Kong, China
2cm wide
中国大陸の蛍石産地は数多あれども、香港の蛍石は聞いたことすらないのではないでしょうか。
かく言う私も2021年までその存在を全く知らず、初めて聞いたときは非常に驚きました。しかもちゃんとした、綺麗な蛍石が、でるんですよ。驚きの塊ですよ本当に。
元々は1906年頃から開発が始まった鉄鉱山で、当初はイギリス資本が入って、ついで旧大日本帝国の占領下でもある程度の開発はなされたようですが、第二次世界大戦を終えた後、1950年代半ばから日鉄鉱業などが関与するようになり、1960年代から70年代にかけて最も開発が進んだ鉱山です。主要鉱石は磁鉄鉱でしたが、1976年にコストの問題から閉山しています。稀に蛍石も産したようですが、全くその標本の存在を知りませんでした。
今回縁があって入手することがかないました。わずかに緑がかった青色の綺麗な蛍石です。おそらく産地を伏せれば、大抵のコレクターはナミビアのOkorusu鉱山っぽいなぁという印象を抱くかと思います。それぐらいちゃんと蛍石の標本。
(2022/3/4)
Lanying fluorite mine, Huairou District, Beijing, China
3cm wide
2022年後半から見かけるようになった中国北京市懐柔区の蛍石標本。中国産蛍石のいつものパターンで、唐突に新しい標本が大量に出現し、コレクターからすると豆鉄砲を撃たれた感じです。北京市内から出るんですか…本当ですか…?
この産地の蛍石をいくつか見てみるとグレーブルーからネイビー系統の標本と、ややくすんだハニーイエローの標本があることがわかります。重晶石とともに産するようでもあります。いずれもgemmyとは言い難いですが、質の良い標本だとtransparentと言っても良い標本はちらほらあります。ただ、形の整った標本の数はあまりない印象です。俯瞰して評価するとモロッコ産と言われても区別がつけづらいだろうなと、そう感じます。
大抵はしっかりした情報が出てくるまでは垂らした涎を拭きつつ待つのですが、今回は北京でしかもこの色ですからね。今後も定期的な標本の供給があるかどうかも良くわからないですし。
(2023/5/21)
Lanying fluorite mine, Huairou District, Beijing, China
1.5cm tall
Collected in 2024
2024年はあまり蛍石を購入しなかった。年間購入数は10個前後と、明らかにこれまでで最も購入数が少ない1年になった。というのも、標本に対する厳しさが増している。年々増している。おそらく来年も増すのだろう。世界的なインフレーションが当然鉱物界にも波及し、しかもコレクター人口は広がりをみせ続けている。他方、こちら、長年蛍石だけを見ているのだ。どうしても目は肥えてしまう。不可抗力だ。つまるところ、購入するための閾値が爆上がりしてしまっているのだ。
その点この標本は簡単だった。非常に。
だって、北京の蛍石なのに宝石質で、ヒルトン鉱山みたいな双晶なんだぜ。即決しないわけないじゃないか。60年代のいにしえに産したヒルトンの蛍石と比べると色は薄い。しかし、鮮やかなレモンイエローであり、Middle Levelから産したヒルトンの蛍石と比較すると色や硫化物の内包では区別がつかないレベルだろう。唯一明確に違うのは、torapezohedronの面がはっきり出ていること。まぁ、なんにせよ。これはね。マストバイ。
(2024/12/20)
Aksu, Xinjiang, China
3cm wide
2024年入ってから頻繁に目にするようになった新疆ウイグル自治区の蛍石である。
ロイヤルパープルから濃紫色ぐらいの蛍石。ピンクのドロマイトを伴っている。透明度とファントムが魅力的で、どことなくスペイン・ベルベスみを感じなくもない。あるいは、ドロマイトとの組み合わせはケンタッキー州の蛍石みも感じる。ありそうだけれども、ほかにはない、”ユニーク”な蛍石と言えるだろう。
さて。このユニークさ。これこそコレクターにとって必須ビタミンみたいなものだと思う。
New LocalityやNew Findな蛍石はあまりないご時世。オコルス鉱山やブルーサークル採石場の再開発は人気を博してはいるものの、完全完璧にNewかと言われるとそうではないだろう。少なくとも自分にとっては。
MilpoやAtaochaのエメラルド色と形容したくなる蛍石を除くと、この2年ほどはセンセーショナルなものは乏しかったように思う。いや、コロラドのTarryall Mt.があるか。なんにせよそれぐらいしか、ぱっと思い浮かばなかった。中国を除くと。
中国からは春夏秋冬ごとに真新しい蛍石が出てくるように感じる。10年前も同じようなことを言っているが、実際そうなのだから仕方ない。正直なところ、質や好みと値付けを天秤にかけ、購入しないことはかなり増えた。かなり、じゃないか。とても増えたと訂正しておく。けれども、真新しい蛍石標本が出てくることは素晴らしいと思う。真新しくユニークな標本は見るだけで、なんか、わくわくする。これが大事なのだ。わかるか。モスよ。
コレクターという生き物は、好奇心が枯れたときに終焉が訪れるのだから。
(2024/9/20)