オーストリアの蛍石
蛍石コレクターに広く知られたオーストリアの蛍石はWeißeckがあるでしょう。18世紀後半から知られ、様々な色合いの蛍石をいまだに我々収集家に供し続けています。しかし、オーストリアには知名度ではWeißeckに劣るものの、綺麗な蛍石がとれる産地は複数あります。ホーエ・タウエルン山脈の峰々からは色鮮やかな八面体結晶が知られていますし、Tyrolからもいくつかの産地の標本が出回っています。 |
Summit Cleft, Weißeck area, Murwinkel, Lungau, Salzburg, Austria
40mm×30mm×30mm
Ex. Markus Rosenkranz collection
Mined in 2000
オーストリアの蛍石でも、日本国内で最も認知されている産地は恐らくここになるでしょう、Summit Cleftの蛍石です。
4×4×3cmの中にブルーグリーンと紫の2色、軽めのステップ、産地的には一般的な熱水による軽い蝕像、方解石との共生というSummit Cleftらしさを詰め込んだ標本です。
一方で単結晶に近い点ではSummit Cleftの中では少々珍しいタイプとも言えます。
光にかざすとその青緑と紫のバイカラーがとても鮮やかなのがわかるのですが(私はスイカカラーと呼んでいます。スイカ好きなんです)、さすがは写真で綺麗に移すのが非常に難しいことで一部に定評のあるSummit Cleftの蛍石、十分に写真で色味を表現することはできませんでした。
ですがへぼへぼの写真からでも、色の片鱗が伝わればなぁとおもいます。
Weißeck山は18世紀より蛍石が知られる古典的産地ですが、Summit
Cleftは比較的新しい産地でその発見は1996年とされます。何だかんだがあり、SummitCleftのことが鉱物界に広まったのは2000年のこと。それからの約10年間で紫、緑を中心としたカラフルな蛍石を世に送り出してくれました。ステップが強めでライトを当てるととても綺麗なものも多く、共生としては方解石が多いのではないでしょうか。
ですが2015年現在では採集は許可を受けたチームのみとなっており、産地としてもかなり消耗してしまったのではないかと考えられているとか。
これは2000年のものなので、Summit Cleftの蛍石の中でも初期のものということになるのでしょう。
the 3rd Cavern, Summit Cleft, Weißeck area, Murwinkel, Lungau, Salzburg, Austria
45mm×45mm×20mm
Collected in September/2015
Summit Cleftはカラフルな蛍石で知られるといっても大抵は紫を基調とした標本なわけですが、この標本はほぼ純粋なシアン。ソーダや夏のプールのような色合い。おお、なんと涼しげなことか。そしてその色合いはLEDライトや太陽光のもとではさらに鮮やかに。
ほぼフローターの標本ですが、どろどろに溶けてしまっているため複雑な感じの結晶に。昨年9月に著名なオーストリア人コレクター達によって、この頂から下界へと降りてきたもの。
(7/9/2016)
Riedingsee(Rieding Lake), Weißeck area, Murwinkel, Lungau, Salzburg, Austria
33mm×26mm×22mm
Ex. Markus Rosenkranz collection
Mined in 1993 by himself
オーストリアの蛍石産地としてはある程度知名度があるでしょう、ザルツブルグ・WeißeckはRiedingseeの蛍石標本。
色合いは鶯色ぐらいの緑とは言い切れない黄緑系統の色合いで、母岩上にドロマイトとともにまとまっています。この手の黄緑は画面上での色の再現に苦労します、もう少しだけ明るくて彩度が良いのですががが…。
和風な感じもするような渋い系の見た目ですが、場所柄はザルツブルグ州と華やかそうなイメージを持ってしまうあれ。
オーストリア人鉱物コレクターから手に入れたのですが、彼?自身が1993年に採集されたものとのことで。
ちなみに18世紀末より蛍石で知られる古典的産地・Weißeck山一帯。
その中でもRiedingsee、訳すればリーディング湖はドロマイトとともに淡い緑~黄緑、青緑色の蛍石を産出することで知られています。
同じくWeißeckでも多彩な色合いを産するSummit Cleftのものとは容易に鑑別ができると言ってもよいのではないかと思うぐらい、蛍石から受ける印象が異なりますね。
それはそれとして、このリーディング湖とても遠くに見える山々と緑、そして湖面の青がとても綺麗な場所なのです。ぜひグーグルなどで検索されてみてください。