ノルウェーの蛍石
Kongsberg silver mining district, Buskerud, Norway
1cm
Ex. Alain Martaud
Ex. Jean Behier
Kongsbergの蛍石標本です。
そう、あの髭銀などでよくしられたKongsbergの。海外の蛍石コレクターとやり取りをし始めた頃、ノルウェー在住のコレクターがKongsbergのめっちゃいい蛍石を載せているのを見てとてもあこがれたものです。しかしそれまでKongsbergの蛍石標本があることを知らなかったぐらいですから、探し回っても容易に入手はおろか、見つけることすらできませんでした。数年してから縁あって、Kongsbergの蛍石を2個入手することができました。
そのうちの一つがこの標本です。その際、およそ1世紀前の試験管に封入されていました。浪漫がありますね。
1cm程度の結晶ですが、価値ある標本ということです。
改めて、ノルウェーの首都オスロの南西およそ70kmに位置するKongsbergは銀鉱山として広く知られた地です。古典的、銘柄産地と称されるやつですね。
1623年に発見されて以降、300年超もの歴史を誇ります。1770年頃に一度そのピークを迎え多くの鉱山が閉鎖されましたが、1816年に新たに有望な鉱化帯が発見されたことで活気を取り戻し、再度1915年から16年にピークを迎えています。最盛期には年間13トンの銀を産出し、そして1958年までに全ての鉱山が閉じられています。
70を超える鉱山が存在していますから、この標本も残念ながらどの鉱山に由来する物かは不明です。大抵の標本は八面体式のカラーレスのものですが、稀に鮮やかな緑とか紫とかが存在するのはずるいですし、髭銀と蛍石が共生するわけわからん標本なんてのも存在しています。わけわからんわ。ほんとにね。
(2022/4/15)
Sando Quarry, Sande, Holmestrand, Vestfold, Norway
ミネラルショーに何を求めるか。
コレクター各々で異なるのだろうが、蒐集を始めて少し経ち、自分が求めるものも随分と定まってきたように思う。
ひとつは『とてもいい標本』。これは当然だろう。そして、もうひとつは『これまで実物を見たことがない産地の標本』だ。
どうやら自分は後者を見つけた時ずいぶん上機嫌になるらしい。それもとてもわかりやすく。単純な生き物だと思うし、きっとオタクとしての知識欲に起因しているのだろう。
ノルウェー産蛍石は概して入手しづらい。
Kongsbergの銀鉱山群からかつて産したものも、それ以外の欧州のコレクター以外にはほぼ知られていない産地のものも、みな一様に入手は容易でない。唯一容易なのはTveitsto鉱山の標本と書きかけたが、それは10年も昔で、しかも大量にでたわけではなかった。
前置きが長くなってしまった。悪い癖だ。ともかく、Sando Quarryの蛍石標本だ。
彩度低めの青緑色を基調に、ところどころ紫色がはいる。3cmに満たない分離結晶だ。照りもない。中国産であれば3ドルとかそういうレベルとか言われかねない。けれども、別にそれでいいのだ。これでいいのだ。今回のミネラルショーでも、私はきっと随分と上機嫌になっていたのだろう。
ちなみに、『とてもいい珍しい産地の標本』を入手した時は、察してほしい。
(2024/5/24)