バイエルン州の蛍石

  

 ドイツ南部に位置しスイス・チェコ・オーストリアと接するバイエルン州ですが、ドイツの蛍石を語る上では外せない土地と言えるでしょう。

特にHermine MineやMarienschacht Mine 、Cäcilia Mine等を擁するWölsendorf Fluorite Mining Districtが著名な産地といえ、その歴史は15世紀以前に始まり1987年のHermine mineの閉山にて幕を閉じたとされます。ですが、2016年現在でも市場においてこの地区の蛍石標本は容易に探すことが可能です。

なお私の中ではバイエルンというとミュンヘンでも蛍石でもなく関係のないアル〇バイエルンのイメージが一番強いのですが。


Cäcilia Mine

Cäcilia Mine, Freiung, Stulln, Wölsendorf West District, Wölsendorf Fluorite Mining District, Upper Palatinate, Bavaria, Germany

Collected in 1936-1944.

62mm×42mm×15mm

 

黄緑色の蛍石に赤鉄鉱の赤のコーティングが有名なCäcilia Mineの中では比較的レアな紫系の蛍石標本。1936年から1944年の間に採集されたものですので、70年以上前の標本ということになります。

 

特筆すべきはそのファントム。紫色の四角が幾つも集まる様には幾何的な美を感じます。

薄めの標本なので強い光を当てずとも美しいですが、光源にかざすとそれはもう。

 

付属するアンティークなラベルからは1936年から1944年12月に連合軍の空爆により店舗が焼失してしまうまでの間に、ミュンヘンのH. Maucherの鉱物店にて取り扱われていたことがわかります。よくぞ第二次世界大戦という激動の時代を生き残びて我が家にやってきてくれました、コレクターとしてこういう歴史の重みをもった標本には敬意を払わざるを得ません。

なおH. Maucher氏はその父親であるWilhelm Maucherとともに有名人のようで、Mineralogical recordのBiographical recordにも記載されています。

 

Wölsendorf Fluorite Mining Districtの歴史は15世紀以前に遡りますが、Cäcilia Mine自体は1936年頃より操業され、おそらく1975年の3月~4月に閉山されたとされます。閉山してからおおよそ40年が経過した現在でもよくとは言いませんがちょくちょく見かけるドイツの有名蛍石鉱山の一つといっても良いでしょう。


Erika Mine

Erika Mine, Säulnhof, Stulln, Wölsendorf West District, Wölsendorf Fluorite Mining District, Upper Palatinate, Bavaria, Germany

34mm×26mm×14mm

 

バイエルン州の蛍石鉱山として見かける機会のままあるエリカ鉱山の蛍石標本。

オールドコレクションからでたものということですが、残念ながら年代や元コレクションの由来など詳しいことはわからず。それはそうとして、抹茶系の色をベースとして、階段状になったエッジが紫色のバイカラーが綺麗なものです。これも光源を裏からあてると魅力が倍増します。いいですね、バイエルンの蛍石も。

 

このエリカ鉱山は1930年代以前から採掘され、第二次世界大戦を経て1970年代に閉山しています。

蛍石としては黄色や紫、緑色系統のものがでており、バイエルンらしい蛍石のでた鉱山です。