カザフスタンの蛍石
ソ連崩壊後にカザフスタン共和国として独立したこの地では、Kara-ObaとAkchatau Mineの蛍石が良く知られます。冷戦終結の流れにおいて1980年代末より西側諸国に標本がながれこみましたが、そのhaydayはもはや遠い昔。2017年現在では良質な標本を入手しようと思うととても苦労する国の一つでしょう。そしてこの国には、蛍石コレクター垂涎のポケットがひとつ存在していますよね。それに関しては言及不要でしょう。
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Kara-Oba W deposit, Betpakdala Desert, Karagandy Province, Kazakhstan
Ex. Sam& Ann Koster Collection
アメリカの蛍石コレクターが昨年手放した、いわゆるオールドものの蛍石。
1995年以前に入手したとのことですから、どうやら89年から94年の間に入手したのでしょう。紫色の八面体蛍石と鉄重石の共生というKara-Obaとしては典型的な標本。
しかしその実光を当てると結晶の外側は灰青色であり、そこがまた綺麗なのでした。眼鏡をはずすと実は…とか、前髪を上げると実は…とかそういうこなんですね。
このKara-Obaは旧ソ連時代から1990年代中盤にかけて稼働していた鉱山です。八面体を主として紫や緑色の綺麗な蛍石がでることで知られる産地ですが、96年に閉山したとされもはやクラシックな産地、良品の入手は困難な地でもあります。蛍石コレクターを名乗るならば抑えておくべき産地ともいえるでしょう。
(2017/12/10)
Akchatau Mine, Shet District, Karaganda, Kazakhstan
Miniature sized
Photo by Kiyoshi Kiikuni
閉山して久しいAkchatauの標本。
2本のしゅっと伸びた煙水晶は控えめに紫の細かい八面体が付着するものと、びっしり細かい八面体に覆われトップに2cm近い端正な八面体がのるものと、対照的。紀伊國氏に撮影していただいた写真でわかるように、この八面体のエッジを光が透過する様がまた美しいのある...
Akchatauも旧ソ連邦時代からソ連崩壊後まで稼働した鉱山で、おおむね知られる標本は紫色または緑色の蛍石。美しいものでマニアに知られるのは、当初アクアマリンと考えられていた青いアレが共生した標本。これは現在では入手が非常に難しい。対してこのタイプの標本もその前後、1990年代初頭に産したタイプで同じく現在では入手がかなり難しいもの。アメリカのいわく付き某コレクターが手放したことで入手できたのであった。つまるところ美しさとクラシックさ、レアさを備えた標本なのである(あと私の好みのサイズもね)
(2018/11/17)
Kent Massif, Karkaraly, Karaganda Region, Kazakhstan
Miniature sized
カザフスタンの蛍石は現代ではModern Classicへと変貌しつつあり、易々と入手できるものではないのかもしれません。未入手ならば見かけたその日が入手するタイミングですよと煽ってみたり。まぁ冗談は半分程度にしておいて、そのカザフスタンの第三の蛍石産地が、ここKent Massifです。
知名度はKara-ObaやAkchatauには及ばないものの、煙水晶と緑色の蛍石が共生するものがこの産地の典型例です。語弊を恐れず言うならば、何となくエロンゴっぽい、こういうのが中津川でも出てくれれば、というフィーリングを持ってしまったりします。。
さてこの標本。当初Kara-Oba産として出されており、「ちょっとKara-Obaらしさがないよね」という言語化できない違和感(つまるところ、またフィーリングです笑)を自覚しながらも入手したのです。入手してラベルを見てみるとKent Massifになっており、違和感がすっと解けて最早納得にジョブチェンジ。水晶の色や、蛍石の色が青より黄色によった緑であること、そして八面体式の結晶がやや丸みを帯びていることはKent Massifと判断しても矛盾しない”らしさ”だな~って。
フィーリングって大事ですね。
(2020/3/6)