ポルトガルの蛍石
ポルトガルの蛍石というとマイナーな印象をもつかもしれませんが、時々パナスクエイラ鉱山の蛍石を見かけます。特に2013年からは現在進行形で面白いものを多数産出しており、内モンゴル・イランと並んで現在最もホットな産地と捉えることもできるでしょう。
パナスケイラ鉱山自体はアパタイトや硫砒鉄鉱などの綺麗な標本を産出するので、コレクターにはなじみ深い産地の一つなのではないでしょうか。
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Panasqueira Mines/ level 0, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro Portugal
Mined in November/2014
40mm×38mm×32mm
ここ二年間で良く見かけるようになったパナスケイラ鉱山の蛍石。
その中でも変わり種ともいえる標本で、若草色ぐらいのアパタイトの上に無数の小さい蛍石というもの。
とある人の言葉を借りるならば、「アパタイトに蛍石のふりかけ」とも。確かにそんな印象をうけますね。
蛍石自体は青紫~紫色で数ミリサイズのものが無数群れとなっており、形はよくよく見るとcuboctahedronのようです。
アパタイトも渋いめの色合いで、本当に面白い組み合わせかもしれません。明らかに当サイトに掲載済みの別標本とは雰囲気が異なるとはいえると思います。
以前はパナスケイラの蛍石はレア物扱いされていましたが、ここ2年ほどの間で幾つもの蛍石が産出しており、中には変わったタイプなども含まれる現状もっともホットな産地の一つと言えるかもしれません。これは2014年11月に鉱山のごく浅い階層にて産出したものとのこと。
Panasqueira Mines/ level 0, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro Portugal
Mined in March/2015
Miniature Size
テリ・透明度ともに十分の水晶ポイントの半分だけを、緑泥石や白雲母を添えて、菫色の蛍石が花咲くかのように覆った美標本。蛍石を細かく観察するとCubo-octahedronとなっています。
水晶ポイントを細かい蛍石が覆うタイプは今でも時折みかけるものの、この標本を含めて最初に出回ったロットが質的に頭一つぬけているように感じます。
2013年の秋ごろから蛍石コレクターの一部で話題となっているパナスケイラ鉱山。2017年現在も新たな物が出回りつづけ我々を楽しませてくれます。当初のように数か月ごとに新たなタイプの標本が出回るといったことはなくなりましたが、まだまだ終焉は遠そうです。いつまでこのパナスケイラフィーバーは続くのでしょうか。
(2017/2/2 編)
Panasqueira Mine, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro Portugal
May mined in 2014 from Level 0, but not sure.
Miniature Sized
ジェミーな楝色の弗素燐灰石、うす茶色の白雲母、そして銀灰色の蛍石。
上品な趣を感じさせるパナスケイラ鉱山の標本。
アパタイトはパナスケイラ鉱山の代表的な鉱物ですので、勿論蛍石との共生標本もいくつか見受けられます。ただし、それらは大抵黄緑色の弗素燐灰石に紫色の蛍石との共生標本であって(例えばすぐ上に掲載しているものなどです)、紫色の弗素燐灰石との共生はほぼ知られていません。私自身この標本を入手した際に非常に驚きました。
なお蛍石は銀灰色と書きましたが、最大で5mm前後、もしかすると内部は紫or青となっているかもしれません。どちらにせよ紫の六角柱にこの立方体、茶色のアクセントがShowyなのには変わりありません。
既知の鉱物商がポルトガル旅行に赴く際、ポルトガルのパナスケイラ鉱山とは別な重金属鉱山の蛍石を探すように頼んだ結果でてきたのがこの標本。
これも2013年から続く一連のパナスケイラ・バブルの飛沫だと考えるならば、おそらくは2014年秋に黄色い弗素燐灰石と共生したものが産出した際の変わり種とも受け取れます。が、その公算は低いことでしょう。となるとこのレアものが産出した時期というのは皆目見当がつきません。いつかわかる日が来るのでしょうか。
(2017/3/27 編)
Panasqueira Mine, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro Portugal
Mined in May/2015
Miniature Sized
Photo by Kiyoshi Kiikuni
2013年以降パナスケイラ鉱山では紫色を中心に様々な蛍石がみられるようになりましたが、その中に緑泥石のうえに鮮やかな濃紫の蛍石がのるものが存在します。この紫色にはどこか独特の魅力があって、紫羅欄のような鮮やかさなんですね。
たいていこのタイプの蛍石は大きくとも1㎝を超えない結晶で、母岩は水晶なのですが、水晶の形まで綺麗な標本はあまり存在していません。
そこでこの標本です。写真から、もう美しい雰囲気が漏れ出していませんか。わずかに散らばった黄鉄鉱の金属光沢も、この美を引き立てています。6年ほどまえに入手して以来、同種の標本で、これ以上に自分の心にぐっとくる(笑)ものにはいまだ出会えていません。
(2021/6/11 )
Level 1, Panasqueira Mine, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro, Portugal
Mined in June/2016
Miniature Sized
緑泥石で覆われた母岩に、銀色の黄鉄鉱をまぶし、大小とりどりの青紫色蛍石をのせた標本。
見た目に美しく、銀河みたいだなあというのが第一印象だったもので、入手してからその印象は変わっていません。
結晶の形は丸みを帯びつつもcubo-dodecahedronらしい感じで、光源によってはカラーチェンジもします。
パナスケイラの蛍石標本は流通する多くがLevel 0のものですので、Level 1というのは少々珍しいと思います。とはいっても2013年より続く浅い階層からの断続的な産出の一部であることに変わりはなく、紫系統の色合いや共生鉱物はパナスケイラらしいといえるでしょう。
パナスケイラの蛍石、本当に好きなんです。
(2017/3/27)
Level 1, Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro Portugal
Mined in August/2017
Miniature Size
クリアな水晶ポイントの上に白雲母と緑泥石の緑がかかり、そしてややドルージーな青紫色の蛍石がのる大変パナスケイラらしい標本。この青紫とくすんだ緑色の組み合わせは毒々しい妖しさをはらんでおり、毒属性のWitchっぽいような印象を与えてきます。好みです。
気づけば2017年産のパナスケイラ鉱山の蛍石を毎月ごとにコンプリートしそうな勢い。月間パナスケイラかなっていうぐらいの。そしてこれもLevel 1。そろそろLevel 2-3の蛍石が欲しいものである。
(2017/11/25)
Level 1, Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Centro Portugal
Mined in August/2017
Thumbnail Size
多少のエッジ擦れはあれど、私自身この標本はとても好みだったりします。
淡く紫色をした蛍石が金属鉱物の外套をオシャレに纏っている…
クリーム色の菱鉄鉱、銀色の硫砒鉄鉱、ブラス色の黄銅鉱、黒光りした鉄重石、そして実は2本のより紫のラインを伴った蛍石。
蛍石とよく共生する鉱物ではありますが、それらの要素をサムネイルサイズの中に!これでもかと詰め込みつつも、美を忘れない。こんなの卑怯じゃないか!
(2018/12/27)
Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Portugal
Mined in February/2018
Thumbnail Size
まぁいつも通り、パナスケイラ鉱山の蛍石を探していたところ出会ったのがこれ。
表面が軽くエッチングをうけざらついた立方体に銀色の硫ヒ鉄鉱と共生したもので、やはりコレクターの目を惹くのはパナスケイラらしからぬ発色の良い水色。
これは2018年2月の産出のもので、このタイプのものではもう少し大きい硫ヒ鉄鉱に5mm程度の水色だけの蛍石が散らばったものも見たり。ただその後まったく見かけないの、limited findと後々言われるものなのかもしれません。いやぁ、パナスケイラの蛍石は面白くて止められません。
(2018/9/21)
Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Portugal
Mined in July/2016
Miniature Size, Photo by Kiyohshi Kiikuni
クリームイエローのアパタイトに蛍石がついたとてもレアな標本。
なにがレアかというと、蛍石の色と形。パナスケイラにおいて純粋な菱形十二面体の蛍石は珍しいのです。その上に、この蛍石の色ですよ!黄色なんです。非常に珍しい色で、その上メインクリスタルは紫とのバイカラーになっている。こういったタイプの蛍石はまったく見たことがなく、見つけた瞬間に小躍り。結局入手してから数年経ちましたが、その間も似た標本は見かけることなく…そういうわけで今回も氏に撮影を依頼してかっこよく撮ってもらいました。
実のところさらに撮影していないパナスケイラの蛍石がどう考えても両手の指では足りないぐらいあるので、徐々に出していかないとですね。
(2019/3/22)
Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Portugal
Mined in July/2019
Thumbnail Sized
パナスケイラっぽくないけど、パナケイラっぽいカタツムリみたないな造詣の標本。
矛盾している表現ですが、矛盾してないんです。これが。
まずは”ぽくない”と感じる要素についてみていくことにしましょう。
実のところ様々な色がでるパナスケイラの蛍石ですが、やはりメインは紫色。こういった黄色が混じる標本というのはレアという点。加えて、立方体由来の面だけ少し赤みがかった紫で色分けされているのも、ぱっと見パナスケイラっぽくないよな…と思わせる点でしょう。
では、どういう点がパナスケイラっぽいかというと、やはり色です。
もう一つ上のかっちょいい写真にある標本のように、パナスケイラでもくすんだ黄色と紫で構成された蛍石がでることを知っていれば、俄然パナスケイラっぽい標本に見えてくるはずです。
また表面がかすかに食像を受けてザラついていることや、黄銅鉱や白雲母と共生している点もパナスケイラっぽさを覚えさせるのではないでしょうか。
総じて擬態でもしてるかのような、とても面白いサムネイル標本と感じるところです。
(2019/9/20)
Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Portugal
Mined in October/2018
Cabinet Sized
Photo by Kiyoshi Kiikuni
緑泥石の緑と蛍石の紫というパナスケイラ鉱山らしいカラーリングを基本として抑えつつも、カラフルで10cm程度の大きさという見ごたえのあるキャビネット標本。
最大で21mmある蛍石は両錘水晶のトップに加えて、緑泥石上に大小さまざまに散らばる。そしてトップの蛍石は青紫と濃い紫のバイカラーだったり、黄色く光る黄鉄鉱をアクセントにしたりと、まぁパナスケイラの蛍石標本の王道を理解した上でコレクターをスマッシュしにきたなと。そして今回はそれにふさわしい写真を撮ってもらいました。
人によっては”jaw-dropping”という形容を用いたくなる気持ちも、わからんでもないです。こういう標本は一期一会だと思うんですよね。一度は閉山した鉱山ですし、再稼働してから7年以上経過している今となってはいつまで標本の供給が続くかも予測はできません。つまり「いつ買うの?」「今でしょ??」(かなり古いか…)というパナスケイラ大好きすぎて困っている蛍石コレクターの戯言なのでした。
(2020/1/24)
Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Portugal
Mined in March/2017
Miniature Sized
やや細長くのびた(メキシコのみたいですよね)黄緑色のアパタイトに、蛍石がバランスよく2mm程度の紫色の花を咲かせています。メインのアパタイトを覆い切らないところが、また憎いですね。
実写真をとられた際に手に持っていた標本がこれ。ちょっとしたお気に入り標本ということで。
2014年のタイプや2016年のタイプとはまた違ったアパタイトと共生する蛍石標本とも言えます。こう幾つもサンプルを提示しているとアパタイトとの共生というのが珍しくなく思えてきますが、それは錯覚です、きっと。ね、そうでしょう?実は提示してない標本がさらに複数あるだなんて…?
(2020/5/15)
Panasqueira Mines, Aldeia de São Francisco de Assis, Covilhã, Castelo Branco, Portugal
2.5cm tall
パナスケイラのサムネイル標本の中では最も気に入っているかもしれません。
いままで幾つもパナスケイラの蛍石を見てきましたが、まれに半球状になることがあります。さらに稀に球状といっても良いようなものみ見られ、これもその一つです。細かな結晶が集合してこの形をなしています。
このタイプは良い標本をこれ以外に一つしかみたことがありません。8年くらいこの鉱山の蛍石を偏愛していますが、本当にないんですよ。
最高に可愛い。
(2021/12/10)
Panasqueira Mine, Panasqueira Complex, Beira Baixa,Portugal
72mm x 53mm x 28mm Largest = 5mm
Mined in late 2013.
かつては蛍石はパナスケイラ鉱山ではレアもの扱いを受けていました。しかし2013年後半に水晶、菱鉄鉱、緑泥石、白雲母、黄鉄鉱等に共生した紫色の蛍石が産出したポケットが見つかったことを皮切りに、以前と比較すれば溢れるほどのパナスケイラ産蛍石がでまわりました。
これはちょうど2014年の春ごろに頑張って入手したピースで、2013年末に産したもの。
苔の様な緑泥石の上に、黄鉄鉱と一緒に紫色の蛍石が不格好に縁に付着したもの。蛍石は最大5mm程度で、よく見ると濃い紫色のゾーンがあります。これでも入手した当時はとても興奮したものです。
2014年前半はツーソンショーレポートなどで報じられていても、日本から容易に入手できるに足るほどの豊富な流通はまだなかったのです。ツーソンショーレポートで見かけからというもの、欲しくてたまらなかったのでした。
(2018/5/5 編)
Panasqueira Mine, Panasqueira Complex, Beira Baixa,Portugal
Attr: Level 0, Mined c.2014 June?
これもまたパナスケイラ鉱山の蛍石。
ただ、エッチングによって表面が白くなった変わった風体なのです。それでいて内部は青紫色という…。
このままでも見ごたえがあるし、劈開面から伺える内部の青紫色もまた綺麗というミニチュア標本。
水晶、菱鉄鉱、硫砒鉄鉱、緑泥石を伴っており、重金属鉱山であるこの産地らしい組合せとなっています。とくに緑泥石のついた水晶も惹かれるポイント。
このPanasqueira鉱山の蛍石にはエッチングによって表面が白くなったタイプも存在しておりこれもその一例。
Pontinha 3 Mine, Vale das Gatas mines, Sabrosa, Vila Real, Portugal
Mined in March/2012 Miniature Size
Ex. Pedro Alves Collection
Described in the article “Vale das Gatas Mining District” in MineralUp (2017/1, pg. 35)
そもそも、パナスケイラ以外の蛍石産地がポルトガルにあることを知っているコレクターが一体どれくらいいるのだろうかというお話から、この自己満足に満ち溢れた記事は始まります。
というよりむしろ、今でこそポルトガルの蛍石≒パナスケイラ鉱山の図式を思い浮かべる方も多いのでしょうが、かつてはVale das Gatasがポルトガルで最も綺麗な蛍石を産するとされました。ただしその入手難易度は非常に、非常に高いもので、1986年にすべての鉱山が閉山してしまい、その大部分は水没してしてアクセス不能とか。もうどうやって入手せぇっちゅうねんみたいな状況だったわけです。
そういう状況の中、数年前に私もかなり努力した結果、なんとかVinheiros Mineの蛍石を人伝にPedro Alves氏から入手できたので満足していました。
後から知ったのですが、2011年にVinheiros Mineから、2012年にPontinha 3 Mineからそれぞれ極少数量の蛍石の産出があって、私が数年前入手できたのは2011年のFindのものでした。閉山してるはずとか、大部分は水没してるのでは…どうやって…とかは蛇の道は蛇ということで、置いておきましょう。
そして、これは2012年にPontinha3 Mineから産出した蛍石。恐らくVinheirosのほうがもうちょっと数は出たのでしょう。Pontinha3の物は片手の指で足りるほどしか見たことがないのです。Vinheirosの物はなんだかんだ言って10個ちょっとぐらいは見ましたから。
ダブルターミネートの水晶に紺色がまだらに入る蛍石がのったもの。美しい… でも、詳しくない人から見ると普通にYaogangxianですかと言われかねないもの。違うんです。Vale das Gatasです。Pontinha3です。超レアです。入手ほぼ不可能なんです。うふふ。
ちなみに、Mineral Up誌2017年1月号に掲載されたPedro Alves氏による“Vale das Gatas Mining District”という記事にこの標本も載っています。
(2018/5/6)