アストゥリアス州の蛍石は確かにその綺麗さ、結晶系の面白さで群を抜いた知名度を誇ります。ですが、スペインの蛍石=アストゥリアス州の蛍石というわけではありません。 緑色・強蛍光で知られるバルセロナ近辺のBerta mine/quarry、同じくバルセロナ近傍のSant Marçal、あるいは知名度は劣りますが綺麗なアップルグリーンや黄色い蛍石を産出したGloria鉱山など幾つもの産地の蛍石が知られています。
この項目ではそんなアストゥリアス州ではないスペインの蛍石を扱います。 |
Berta quarry and mine, Sant Cugat del Vallès-El Papiol, Vallès Occidental-Baix Llobregat, Barcelona, Catalonia, Spain
52mm×32mm×15mm
Mined in 1967
Berta Mineらしくない印象をうける 、でもBerta Mineのオールド物。
色合いは典型的な緑色系統であることには変わりませんが、近年よく目にする青緑でキラキラしたものではなく黄緑系の蛍石結晶。
本当は写真よりもうちょっと鮮やかな黄緑色なのですが、どうもこの系統の色合いには毎度苦戦させられます。
細かく見ていくと結晶系は八面体というよりは、六面体のステップが目立ちます。また強蛍光で知られる産地ですのでブラックライトで蛍光を買う人したところ、青白く光るのは光りますが近年出回っているものに比べると蛍光は少し弱め。
ここのものは水晶や重晶石、方解石なんかと共生するものも知られていますがそういったものもついておらず。
結晶が10mmを超えることは珍しい産地なので、古さと結晶形以外にも結晶の大きさという観点でもちょっと変わっています。
もしかすると、別産地のものという可能性もすこしだけ考慮してみたり…
Berta鉱山はバルセロナ近傍に位置しPapiol鉱山の名でも知られます。加えて、表層部は石切り場となっているためBerta Quarryの名でも流通する産地です。発色の良い数mmサイズの緑色系統の八面体、強蛍光の2点において蛍石コレクターの間では広く知られた産地ではないでしょうか。
Singuerlín, Santa Coloma de Gramenet, Barcelonès, Barcelona, Catalonia, Spain
Minature Sized
Collected c.2013
スペイン・バルセロナというとすぐにBerta/Papiol quarryの緑色八面体が思い浮かぶわけですが、バルセロナには他にも緑色の蛍石がありまーす、ということでSinguerlínの蛍石である。
元々は1960年代に白~黄色・薄緑色の半球状になった結晶を産出していたようで、物によっては間違ってゲアルクスタイトとラベルされたこともあったそうな。その後2013年ごろより新しり緑色で半球状に結晶したものが出回り、これもその時のもの。
結晶のサイズは大きくて6mm程度で、半球状になった結晶が群晶しており見た目としては面白いかも。
母岩とあわせてこういう風体のものは他では見たことない、独特で見た瞬間に判別が可能なタイプの標本。よいではないか。
(2017/4/30)
Matagalls Mine, Sant Marçal, Montseny, Viladrau, Osona, Girona, Catalonia, Spain
Small Cabinet Sized
Mined in October/1986
蛍石コレクターにとって決して知名度のある産地ではありません。
だけれども、カタルーニャの蛍石としてはBerta Quarry同様に外すことのできないもの、それがMatagalls Mineでしょう。場合によってはSant Marçalとだけ表記されていることもあります。
大抵はレモンイエローの鮮やかな蛍石なのですが、この標本も多分に漏れずレモンイエロー。ちょっと面白いのは、雲母の一種であるイライトが蛍石表面をまだらに覆っていること。それゆえに母岩の水晶や方解石の白と、レモンイエロー、イライトの白緑色が混ざっていい風味を出しています。あまりこういう標本はみかけません。
初見であれば、モロッコであったり、同じスペインでもMosconaと言いたくなりそうな、そんな雰囲気かもしれませんね。
(2021/2/5)
Mures Quarry, Alcalá la Real, Jaén, Andalusia, Spain
Thumbnail Sized
パッと見た感じBerbes辺りの蛍石かなという印象ですが、Asturias州とは全然違ってAndalusia州の蛍石。
初めて見る産地なので惹かれて買ってみました。
薄めの紫と外側の濃い紫がいい感じですが、この茶色がかった斑点は一体何なのだろう…。
このMures Quarryではドロマイトや石灰岩の中にちょくちょく蛍石が出てくるんだとか。
これを購入したすぐ後に2段階に成長しているタイプ(白と紫)も出てきたので、そちらを買っておけばよかったかもしれない。
(2017/4/30 編)
Gloria Mine (Mina Gloria), Cardenchosa, Hornachuelos, Córdoba, Andalusia, Spain.
44mm×25mm×45mm
アンダルシア州Gloria鉱山の黄色い蛍石。
結晶は最大6mmとやや小ぶりですが、透明で色・照りがとても美しい結晶が沢山ついています。
ややレアめの産地の様ですが、スペイン蛍石も存外バリエーションが多く面白いのです。
有名なアストゥリアス州・Mosconaの黄色い蛍石と似たような黄色と思われるかもしれませんが、
このGloria Mineの蛍石は青白いバライトや方解石だったりの共生は見かけません。
(母岩から受けるイメージも少し違います)
なお、Gloria鉱山ではアップルグリーンの物と黄色いものが産出しており、これも典型的な一つといって言っていいかもしれません。
Gloria Mines, Cardenchosa, Hornachuelos, Córdoba, Andalusia, Spain
Collected in February-March/2016
33mm×32mm×30mm
Gloria Mines産の新産蛍石。
スペイン産という範疇では青い蛍石はよくあるものですが、この青はいつものスペイン産とは一味違います。 というよりも、モロッコ・El Hammam産の濃い青の蛍石とそっくりな色合いなのです。
あの人気の緑がすこし混じったような深い青であり、そしてライトをあてるととてもとても。
モロッコ産と異なる点と言えば、モロッコの青蛍石では黄色いゾーニングを伴うことがあることに対して、これは緑色のゾーニングが微かに認められる点でしょうか。
はっきり言って見た目では殆ど見分けがつきません。
採集者から直接入手したもので、元々は詳細な産地が記載されていなかったのですが、やり取りするうちにここだと。このGloria Minesからは黄色い蛍石かアップルグリーンの蛍石が稀に流通してきますが、この手の青いものは初めて見ました。もしかしたら産地は微妙に違うのかも、と半信半疑なままではあります。
一方で今後幾らかの流通が続くかもしれません。さて、どうなる。
(4/15/2016)